正月休みに、近所の里山の小川で、子供達と網を片手にガサガサをした時に、この魚達も何匹か入ってきた。
真ん中のメタリック調の体表に黄色味がかった尾ビレの魚達が、この投稿の主役のオイカワだが、霞ヶ浦本湖や利根川本流に繋がる水系で、私の住んでいる辺りでは、普通に見られる魚である。暖かな陽気の中、川沿いの土手路を散歩している(滅多にそんな優雅な時間は持てないが…)と、派手目の色彩に彩られたオイカワの雄が、ユラユラと川の流れに身を任せている姿なんかに遭遇したりする。…………今度は、綺麗な婚姻色の出てそうな時期に捕まえたオイカワの雄の写真も、アップしてみたく思う。
ちなみに、オイカワと生態や形状が比較的似た魚に、カワムツやヌマムツという魚も居るのだが、私が暮らす茨城県南部だと、私の家より遥かに筑波山が大きく見える辺りの水系では、カワムツ(ヌマムツ)が主役になっている水系も存在する。中には、オイカワとカワムツが混棲しているのではと思えるような水場もある。
さてさて、このオイカワは、日本全国何処にでも棲息しているのではないであろうか?そして、名前の方も、地方によって様々で、関東では、オイカワという正式名称以外にヤマベという名でよく知られている。九州や中国地方では、ハエと呼ばれていた。私が中高生活を送った北部九州では、やはりハエ(昆虫のハエとは明らかに発音の仕方が違い、“ハ”にアクセントがあるのは同じなのだが、”エ”は、低音で小さく発音する)と呼ばれていて、数釣りの大会が行われていたりした。また、子供の頃、たまに遊びに行った長野の親戚の家の辺りでは、ジンケンと呼ばれていた気がする。この長野のオイカワを釣っていた場所は、結構な標高のある志賀高原に点在する池だったが、誰かが放したものが繁殖しているにせよ、随分寒さにも強い適応力のある魚なのが伺える。それらの志賀高原の池より、何百メートルも下った温泉街を流れる川では、渓流魚であるヤマメや時にイワナが釣れてくるのだから、面白い。
最後に、このオイカワの思い出としては、個人的には、高校を卒業したけど、何のために大学に行くのか、何のために勉強しているのか、全然実感が湧かず、晴れ渡らない不安な気分の中、自宅で浪人生活を送る中、気晴らしに時々、お気に入りの短めの釣竿を片手に近所の川に徒歩や自転車で出掛けることがあった。出掛けるキッカケは、雷の音だった。遠くで雷鳴が聞こえ始めると、勉強を止め、そそくさと準備を済ませ、冷蔵庫に入っているウインナーを一本だけポケットに入れて、雷がなっていた方角の川に出掛けるのであった。釣り場に着く頃には、雷も雨も収まり、適度に濁った川で、ポケットに入れてきたウインナーをちぎって餌にして釣りを始めるのであった。濁った川からは、警戒心が無くなったオイカワが、いとも容易く釣れて来るのであった。大概は、釣りも後半になった頃には、川の濁りも取れて来て、魚信も遠のき始め、納竿のキッカケとなるのであった。
そんな将来や自分の能力に漠然とした不安を感じて過ごしていた日々に、一時的にでも心の中をスッキリ晴れ渡してくれたのが、オイカワの綺麗な婚姻色との出会い触れ合いだったのを、今、しみじみと思い出して来た。同じ川では、時に、日本バラタナゴ(大陸バラタナゴでは無かった気がする)やナマズ等も連れて来たが、やはり一番、心を癒してリラックスさせて(束の間の多幸感を)くれていたのはオイカワだった気がする。