シモフリトゲエダシャク 成虫 雄 Phigalia sinuosaria (Leech, 1897)

数日前に近隣の雑木林に隣接する建物の壁に止まっていた蛾のひとつである。

大きさは、前翅長で22ミリぐらいあった。

大きさと言い、止まり方と言い、ナミシャク亜科の蛾の予感がしたが、冬場に現れるナミシャクを調べたところ、該当種に辿り着けず、エダシャク亜科の蛾に範囲を広げたところ、シモフリトゲエダシャクという種に行き着いた。(フユシャク亜科の蛾には、この大きさとこの雰囲気の蛾はいないと感じていたので、最初から調べる範囲からは外していた。)

上の写真の個体は、シモフリトゲエダシャクだと思う。緑色っぽい雰囲気の個体が多いというのも、この蛾の印象と合致していた。

そして、シモフリトゲエダシャクの雌も、翅が短いらしく、飛べないようである。ここで、気が付くのは、フユシャク亜科の蛾であろうと、ナミシャク亜科の蛾であろうと、エダシャク亜科の蛾であろうと、冬に活動するシャクガ科の蛾の雌は、翅を持たない種類が多いのではという共通性である。ここに、なぜなんだろうという好奇心が芽生えたのだが、直ぐにネットで調べてみる前に、自分は可能な限り、自分の頭で仮説を考えてみることの意義に最近気が付き始めたので、今回もその行程を踏んでみる事にした。

直ぐに脳裏に浮かんだ映像は、まだまだ生物の息吹が感じられない早春の雑木林で人間の足音にビックリして飛び立った中型の蛾が高いところへ飛んで逃げようとした時に、何処に木化けしていたのか、突然飛んで来た鳥達に簡単に捕食されてしまうシーンである。こうして、産卵という重い使命を持っている雌達からすると、翅が短かったり無かったりする方が、そもそも飛べずに、鳥達に捕食されない事から、こうした特徴を得た個体群が生き延びてきたのではないかという仮説を自分は立てた。

だが、調べた結果は、冬の低温化で少しでも体温の低下を防ぐ為に、体表面の面積を削ぎ落とした形が、翅のない姿になったとのことであった。

さて、このシモフリトゲエダシャクの幼虫の食草は多岐に渡るようである。生息分布の方は、国内は、北海道から対馬含む九州まで。海外は、朝鮮半島からロシア沿海州南部までいるようである。(台湾からの生息情報もあるようである。)

最後に、シモフリトゲエダシャクの、シモフリは、何となく前翅の雰囲気から来ているのが分かるが、トゲエダシャクのトゲの部分は、ネット上を調べる限り、納得の行く説を見つけることは出来なかった。