ニホンヤモリ

私が住む茨城県の南部では、以前、私が住んだことのある九州や、埼玉の都心に近いエリアで当たり前に見かけていたのとは打って変わって、ヤモリはそんなには沢山居ない。

私の中での夏の風物詩に、家の窓から漏れる灯りに集まる虫達を、ヤモリが捕食するのを、家の中から、窓ガラス越しに眺めるというものが有るのだが、そのヤモリの行動は見てて飽きず、ヤモリって可愛らしい生き物だなというのが、私の中でのヤモリの印象である。

しかし、茨城に移り住んで10年近く、中々、ヤモリとは出逢えない日々が続いていた。雨風を凌げそうな倉庫内に舞い込んだ落ち葉等を、職場近くで掃除してる時に、極たまに、眠そうに小さなヤモリが現れるのを見て、ヤモリが生息はしているんだなと実感するぐらいであった。やはり、南方系の生き物のヤモリは、真冬にマイナス10度近くになる地域では、生息できないのかな〜と分析していた。

そして、新築した家の外灯に、ヤモリが寄って来てないか、毎年暖かくなると、期待に胸膨らませてる自分が居たけど、その後も、我家の壁にヤモリの姿を見つける事は無かった。

そんな折、真冬の寒い時期に、近くの妻の実家の古い物置の中の物を整理する機会が有った。要らないものは処分しようと色々な箱を開けると、中から丸々太った冬眠中のヤモリが、次から次に現れたのだった。

私は、そのうちの15匹ぐらいを、我家に持ち帰り、隣接する土地の使われていないボロボロの廃屋化した物置の中に、滑り込ませた。もちろん、我家の敷地内で繁殖してくれたら、嬉しいのにとの気持ちを込めて……と同時に、今までと違う環境に、真冬のこんな時期にリリースして、冬の寒さを生き残れるんだろうかとの罪悪感も、有ったことにしておこう。

そして、リリースした事も忘れかけたその年の夏の始め、妻が帰宅の時に玄関の外灯の所から、ヤモリっぽいのが、落ちてきて、植え込みに消えて行ったような気がすると言ってきた。私は、直ぐに、大きさ?等の質問をした。大きさに関する質問をした理由は、リリースした丸々太ったヤモリ達が生き残っているのか、新しく生まれた小さなヤモリを見たのかが知りたかったのだ。

それから、数日後、家の大きな明かり取りの窓に、子供が何か多分ヤモリっぽいのが付いているよと、興奮気味に教えてくれた。確かに、ヤモリだった。しかも、私がリリースしたもの達より、明らかに小さな個体も混ざっている。

今年も、数日前に、大きな明かり取りの窓にへばり付き、灯りに寄って来る虫を狙うヤモリを見ることが出来、ほっと一安心!

ヤモリ、可愛いよね〜


ちなみに、このヤモリという生き物。古来から日本に生息していたというわけでは無いらしい。平安時代辺りに、入ってきたと言ってる人達も居る。熱帯の国の生き物のイメージがあるし、頷ける。

過去に2000年版の茨城県のレッドデータ・リストでは、今後の生息状況を注視する生き物として紹介されていたみたいだが、その後、生息域や生息報告の増加で、レッドリストからは、現在外されている。

茨城県のホームページでは触れられていないが、生息数増加の一因は、明らかに温暖化も関係していると思う。