ヤマカガシ  Rhabdophis tigrinus (Boie, 1826)

先週末、栃木に山釣りに行った時に、河原の水溜りで蛇が何かをしている(水溜まりのオタマジャクシを食べていた)現場に遠目に気が付いた。

マムシかと思い近づくと、鎌首を持ち上げるわけでなく、一目散に山肌を登り逃げようとする。その時に咄嗟に撮った写真を以下に。

ヘビの名前は直ぐに分かった。

ヤマカガシである。

しかし、何十年ぶりの出会いであったろうか。この蛇は、子供の頃から知っていて、千葉市の郊外の里山で、大きなヒキガエルを加えて後退りしている現場や、他にも九州の海が近い水田の畔で日光浴する個体に、結構出会って来た思い出がある。

しかし、その後の都会生活や、更にその後の自然の残る茨城県での生活の中でも、出くわす機会は無かった。シマヘビアオダイショウ、時々ヒバカリ、そしてもっと時々、シロマダラには出会えるのに、ヤマカガシは、何処へ行ってしまったんだろうと気にはなっていた。

そして、今回栃木の山間部の標高350メートルの付近で、久しぶりの出会いとなった。

同時に、栃木の山にいて、何故茨城の平地にいない(見かけないほどに少ない)のか、その答えを出せない自分がいる。

さて、この蛇の生息分布を調べてみると、国内は、本州と四国と九州にしかいない蛇だと分かった。しかし、海外は、朝鮮半島と中国のほぼ全域にいるようである。台湾には、Rhabdophis tigrinus formosanus (Maki, 1931)というまた少し違うヤマカガシがいるのである。そして、最近のDNA解析では、大陸のものとは、結構遺伝子的に差がある事が分かったようで、日本のヤマカガシは、日本固有種のような扱われ方になっていくのかもしれない。また、更に、日本の生息地の中でも、関西以西(能登半島や佐渡島含む)の個体群と、関西以東にいる個体群と、それらの地域に跨って生息している別系統の3亜種がいるようである。この3亜種が、どうして国内に存在しているのかを推理するのは、この上なく楽しいことだが、魚類のタナゴなんかも、北海道と南西諸島には生息していない同じタイプである。

私の個人的感想として、最近見かけなくなって来た蛇だというのがあったが、各都道府県が独自に定めるレッドデータでは、日本にいる蛇の中では減少を1番注目されている種なのか、東京都が絶滅危惧種Ⅰ類、準絶滅危惧種に指定しているのが、山形県、福島県、栃木県、埼玉県、千葉県、京都府、大阪府、奈良県である。他にも、3都道府県が注視しているとの事である。

最後に、ヤマカガシは2種類の毒を保有している毒ヘビではある。積極的に毒を利用して攻撃をするタイプの蛇では無いので、事故は少ないが、過去に死亡例もあるはずである。ちなみに、2種類の毒というのは、一つが牙から出す毒であり、もう一つは、耳の辺りに溜まっている毒である。この、二つ目の毒は、同じような毒を持つヒキガエルを食べることから蓄積してゆくようである。

さて、近隣で見かけないヤマカガシ………生態系のどの辺りに位置していて、近隣では、どのような遷移の途中なのか気になるところである。

シマヘビ Elaphe quadrivirgata
(Boie, 1826)

最近、自分の中では、近隣でシマヘビを見かけない気がしている。

シマヘビに多く出会えた雑木林でも、4,5年前を境に出会える蛇は、アオダイショウに代わった気がする。

自然界では、こうした現象はよく起こるが、9月の頭に車で4-50分のところにある場所に、ウナギ釣りに出かけた際に、久しぶりに見かけて写真に撮っていたので、紹介したいと思う。

ウナギ釣りに興じていたが、ふと背後の水門を見るといた感じである。

すぐに、典型的な紋様のシマヘビと分かったが、最近、近隣の自然下で出会うヘビがアオダイショウばかりだったので、少し嬉しく感じた。

シマヘビは、子供の頃より何処でも普通に出会えるヘビだったが、アオダイショウと比べるとそれほど大きくならない印象を持っていた。しかし、10年近く前に、長さはちょっと劣るが、アオダイショウの老体並みに大きく太いシマヘビに出会ってから、随分と大きく育つシマヘビもいるんだなぁとの感想を持っていた。

シマヘビが優占種だった雑木林でアオダイショウしか見かけなくなった理由を自分なりに考えているが、今のところ、答えは見つけれていない。温暖化?………シマヘビを好む天敵の出現?

ただ、その雑木林では、樹液の出るクヌギに集まる甲虫を狙ってか、シマヘビの綺麗なマムシに擬態したような幼体が待ち構えていると思われる姿が観察できたり、積み上げられた材木に座って電話してたら、積み上げられた材木の下からシマヘビの幼体が現れたりして、普段隠れている場所の手掛かりをもらったりしたのを覚えている。

さて、もしかして、シマヘビを見かけなくなったのは、温暖化の影響はないかとの仮説を自分なりに立てて、先ずはシマヘビの本来の生息分布を調べてみたのだが、意外だったことには、シマヘビの英名が、Japanese striped snakeというだけあって、日本列島の固有種と言いたくなるような生息分布であった事である。興味深いのは、アメリカ合衆国の広大なフロリダ州全般にもシマヘビは拡がっているようで、どういう経緯で持ち込まれたものが拡がったんであろうと興味が湧いた。

では、今度は、アオダイショウの生息分布も調べてみたのだが、こちらもJapanese rat snakeという英名が付けられていて、シマヘビ同様に日本列島に固有と言いたくなるような分布なのである。そして、どちらにも気候帯の嗜好みたいなものを、私は見出せなかった。

ちなみに、近隣では見かけたことがないが、幼き時から千葉県や九州の水田でよく見かけていたヤマカガシ(英名:Tiger Keel Back)という蛇は、中国大陸の方にも結構広く分布している蛇ということも知った。(現時点では、日本にいる他の蛇の海外分布は調べていない。)

シマヘビは、温暖な九州の地にも居たのを覚えている。学校の掃除中に、焼却炉の近くにいたシマヘビを捕まえた生徒が、皆に見せようとゴミ箱の中に入れて持ち歩いたのだが、そのゴミ箱の中のシマヘビは、小便臭というか、とても強烈な臭いを撒き散らしていたのを覚えている。

次は、何処でシマヘビに出会えるだろうか……楽しみである。

アオダイショウ 2nd

最近、近隣の林の林縁を歩いていると、蛇らしきものが斜め前方にゆっくり逃げていくのに気が付いた。

この森では、昔からシマヘビをよく目にしていたので、ブログ未投稿のシマヘビの写真が撮りたくて、少し追跡してみた。

普通なら、ヘビはスルスルと逃げて、切り株の中や枯れ枝がまとめられたような場所に逃げ込んでしまい姿を消すが、今回は、途中でピタッと静止した。同時に、こちらに顔を向けて首を数段に折り曲げて、いつでも飛び掛かれそうな威嚇のモードに入ってきた。

その時に気が付いたのだが、威嚇モードになった時に、尻尾の先を激しく揺らし、バタバタバタという音をさせていた。

私がスマホを近づけて写真撮影中は、ずっと緩い威嚇モードだったが、全然逃げる気配がないので、近くに落ちている長めの枝を蛇に近づけたら、飛びつき噛み付いてくるのであろうあろうかとの好奇心が生まれ、実際に実践してみた。

しかし、予想に反して、全然、枝の動きに反応しない。枝を鼻先まで近づけて、頭の上を押さえても、全然身じろぎもしない。

蛇って目が悪いのかなとも考えながら、私からその場を後にした。

10分ぐらいのその森の散歩が終わって、車に戻る途中で、再び、その蛇とは鉢合わせする事になった。お互い、同時に気が付いたみたいに、認識し合った瞬間にお互いの歩が止まった。

しかし、今度は、ヘビは威嚇体制に入る事なく、風景に化ける作戦を取ってきた。その際に、沢山、近くで写真を撮らせてもらうことが出来た。

ただ、蛇の方も、本当に数ミリづつだが、ゆっくりとゆっくりと後退しているのがせつなかった。1回目の時は、余裕が無くて、何も考えずにその場を後にしていたが、今回は、近くで写真を撮らせてくれた事に感謝の気持ちを抱きながら、その場を後にした。

後で、シマヘビだったら良かったなとの期待を持ちながら、調べたが、やはりアオダイショウである。

そのうち、シマヘビの写真が取れればなと思う。