アメリカシロヒトリ 成虫 雄 Hyphantria cunea (Drury, 1773)

最近、近隣で、この蛾を見かけて、写真に撮っていた。

大きさは、前翅長で17ミリぐらい。

一目見た時に、こんなヒトリガ科の蛾がいたかなと、頭を捻ることになった。在来のヒトリガ科ヒトリガ亜科の蛾達を当たるが、見つけれず、もしかして、アメリカシロヒトリという外来種の可能性が頭を過った。

その路線は正解であり、紋様の変異が多岐に渡るが、上の写真の個体は、アメリカシロヒトリの雄のようである。

そして、まだアメリカシロヒトリだと分かっていない時に、なんとか種に辿り着く情報を得ようと、この蛾の腹部を見て見る事ににした。ヒトリガ亜科の蛾達だと、擬死の習性があるので、触れると死んだふりをして動かなくなってくれる。こうして、撮った写真が以下のものである。

腹部には、色が無い。脚の毛の色は、オレンジ(🟰キハラゴマダラヒトリと同じ色)であった。

さて、アメリカシロヒトリと言えば、私が子供の頃には、市民に恐れられていた蛾であり、公園の桜の木が丸坊主にされるとの風評で、よく公園では消毒作業が行われていたのを思い出す。

その後は、いつのまにか、アメリカシロヒトリの猛威や風評は沈静化したのか、あまり被害の話も聞かなくなっていった。そして、アメリカシロヒトリの実物も見たことはなかった。

たまに、アメリカシロヒトリの幼虫と思われる蛾の幼虫に出会うことはあったが、成体に出会うのは初めてである。

正確には、このアメリカシロヒトリが日本で初めて確認されたのは、1945年に東京においてである。進駐してきたアメリカ軍の物資に混じって来たと思われる。そこから関東一帯に拡がって行き、1970年代から1980年代にかけて、害虫としての風評が凄く高まりを持っっていたのを、なんとなく覚えている。

では、このアメリカシロヒトリの生息分布は、先ずは世界的には、北米大陸の温帯域には、かなり広まっている蛾である。そして、ヨーロッパは、フランスからウクライナ辺りまで生息しており、緯度が少し高くなった少し寒いエリアには生息していないようである。そして、極東アジアの日本や韓国や中国の東部の都心部に生息しているようである。ここから、生まれる疑問は、「アメリカシロヒトリって、一体何処が起源の蛾なのであろう?」ということである。ちなみに、脚が同じようなオレンジ色(山吹色)をしたキハラゴマダラヒトリなんかは、ヨーロッパで大繁栄している蛾である。ここから、類推すると、ヨーロッパが起源で、1773年には早くも種として、ヨーロッパで認識されていた蛾が、何かの原因で北米大陸に持ち込まれ、猛威を持って拡がって行ったのかなと想像してしまう自分がいる。それから、20世紀に入り、日本へと。

ところで、このアメリカシロヒトリの幼虫の食草が、バラ科やブナ科や他にも多くの科の樹木の葉が知られている事も、私には興味深く感じられてしまう。と言うのは、今回、このアメリカシロヒトリがいたエリアにいる他の似たような蛾達の殆どが、樹木の葉よりも草本をメインに食べる種が多いような気がするからである。もちろん、クワゴマダラヒトリ等の樹木食のヒトリガ亜科の蛾達もいるが……。

一応、現在では、特定外来生物法でも、生態系被害防止に関する法律でも、注目はされていない外来種と認識している。(間違っていないことを願う。)ただ、植物防疫法では、日本に持ち込まないように注視されている種かもしれない。

最後に、このアメリカシロヒトリ……とにかく、現在、近隣でそれほど見かけないヒトリガ亜科の蛾であるとは、私は思う。

キハラゴマダラヒトリ 成虫 Spilosoma lubricipedum sangaicum Walker, [1865]

今年のキハラゴマダラヒトリとの初遭遇は、3月22日。場所は、我家の外灯下。

今のところ、この日の2個体以外に、他の場所で、キハラゴマダラヒトリに出会ってはいない。ゆえに、少し早い出現とは感じていた。

大きさは、前翅長で17ミリぐらいだった。

なぜ、キハラゴマダラヒトリかと言うと、腹部が黄色い(実際は山吹色)だからである。

さて、この蛾は、春が1番、個体数が多いが、その後もあと2回ぐらいは出現しながら、春から秋まで長く見れる蛾である。

自分は、羽化したての肩にフワフワの綿毛を付けている姿は、可愛くって美しくって、白をベースにしているところが気品もあって、大好きな蛾である。ちなみに、キハラゴマダラヒトリとは同じヒトリガ科に属し、脚の黒いビロード感が、美しく、私が気品を感じる蛾に、セスジモンヒトリという蛾もいる。

このキハラゴマダラヒトリに関しては、同じ場所でも、出現時期(何回目の羽化か)によって、微妙に特徴が変わったり、少し離れた場所との個体群では、微妙な違いがあるように思えて、目下、それらの共通性を楽しみながら見出しているところである。

ヤネホソバ? 成虫 Eilema fuscodorsalis (Matsumura, 1930)

ヤネホソバの成虫というものが、近隣で見かけるヒトリガ科コケガ亜科の蛾達のうち、どれなんだろうとの疑問を常々抱き続けて来ていた。

という事で、秋に限りなくヤネホソバの幼虫であろうと推測して捕まえていた幼虫を、あわよくば成虫に羽化する事を目論み、飼育していたのだが、最近、そのうちの1匹が運良く成虫に羽化してくれていた。

以下が、その羽化した個体である。

飼育下で貧栄養のまま蛹になった可能性も考えられるが、羽化して来た個体のサイズは、私が予想していたより、ずっと小さい。上の写真の個体で、体長で12ミリぐらいしかない。

あと、私が知りたかったのは、この蛾の下翅の色であるが、飛んでいる瞬間に目にする限り、上翅よりは、濃いが、物凄くハッキリとした黒や濃い灰色といったいった感じはしなかった。

という事で、自分の中では、一応、上の写真の個体が、ヤネホソバの成虫なのかなと結論付けたく思っている。

ところで、このヤネホソバの幼虫は、毒毛針を持っているという情報の真偽だが、ヤネホソバの幼虫の投稿の時には書けなかったが、後日、ヤネホソバの幼虫と考えられる幼虫を、人差し指の甲で触ってみたことがある。どうせ、意識できるような影響は起きないであろうと予想を立てていたのだが、触れてから一時間後ぐらいからは、明らかに、触れた指の甲の部分が薄らと赤くなり、同時に固くなり、痒みの症状が現れ始めた。物凄く痒くて、集中力を奪われるというまでは行かないものの、なんか虫に刺されて痒くなってしまったなと感じるような状況にはなった。そして、痒みは6時間ぐらい続き、その後は、自然と知らないうちに影響は収まっていった感じである。

最後に、ヤネホソバの幼虫の投稿でも触れたが、このヤネホソバの生息分布を以下に記しておく。

この蛾の生息分布の方は、国内は、本州以南……九州近海を経て、沖縄本島含む南西諸島まで。海外の生息分布は、ちょっと辿り着けなかった。