ヤネホソバ? 幼虫 Eilema fuscodorsalis (Matsumura, 1930)

最近、近隣で見かけて、写真に撮っていた蛾の幼虫である。

初めて出会ったわけでなく、毎年、同じ場所に発生しているのをよく見る。

上の写真の個体で、体長25ミリぐらいである。この蛾の幼虫は、これ以上に大きくなっている姿は見かけず、もしかしたら、このサイズが最大サイズぐらいなのではないだろうかとも思いたくなる。

この蛾の幼虫は、金属に白いペンキが塗られている表面にいるところを、同じ場所で、ここのところ数年は目撃し続けている。最初は、何故、人口的なそのような場所に集まっているのか分からなかったが、今では、表面の地衣類を食べている事を知っている。

そして、こういう場所の地衣類を食べている蛾の幼虫には、ヒトリガ科コケガ亜科の幼虫が多いことも、実地で学んでいる。では、この上の写真の幼虫が、何というコケガなのかという事だが、調べたところ、種名にコケガは入らなかったが、やはりコケガ亜科のヤネホソバの幼虫であろうとの見解に達している。

ただ、同じように地衣類を食べるコケガ亜科の幼虫の中で、このヤネホソバの幼虫が特筆すべき特徴を持っているとすると、毒針毛を備えているというところであろうか。おそらく、その事実を知らずに指で摘んで、その指に付いた毛を落とさずに首周りとか皮膚の弱い部分を触ってしまい、首に赤い発疹が現れたりして、同時にチクチク痒いなみたいになる流れが、自分の中では想定出来るし、いちいち気にしていないが、そういうケースの原因の一つに、このヤネホソバの幼虫の仕業も過去に含まれていたに違いないと思う。実際のところ、お友達の子供が、同じような症状が出て、原因を探したところ、2階のベランダにいたこの幼虫の仕業と突き止めていたが、おそらくベランダに干した洗濯物に紛れ込んだ幼虫の毒針毛が、洗濯物に付着して、皮膚の弱い子供に影響が出たものと推測する。

では、このヤネホソバの成虫はと言うと、正直、似たような蛾が多くて、なかなか成虫の姿を、これがヤネホソバですと断言出来るまでには至ってはいない。ただ、見つけやすい蛾の幼虫なので、捕まえて、成虫になるまで育ててみるのも有りかと思う。

さて、この蛾の生息分布の方は、国内は、本州以南……九州近海を経て、沖縄本島含む南西諸島まで。海外の生息分布は、ちょっと辿り着けなかった。

シロヒトリ 雌雄 触角の違い Chionarctia nivea
(Ménétriès, 1859)

8月の暮れより、近隣の自然下では、シロヒトリとの遭遇が容易いはずだが、この沢山いるシロヒトリを眺めながら、今年は、自分にしては珍しく好機を逃す事なく、一つの実験(調査?)を試みれたと思う。

そうだ……沢山出会えるシロヒトリ達を見比べて、雄と雌の違いを見出し、確証してみようと……。

そして、運の良い事に、モデルは沢山いるだけでなく、おとなしく近づいても逃げない。おまけに、手で摘んでも、擬死の習性で、しばらくの間は動かず、観察はし放題になる。

そして、もう一つ運の良いことに、この日は、産卵直後と思われる個体が、産みつけた卵に覆いかぶさるようにいた。普通に考えると、その個体がメスだと思うので、その個体はどんな特徴があったかは以下の写真で説明してみる。

触角が糸棒状に見える。厳密には、糸棒状というよりは、片側に微妙な櫛歯(鋸歯)があるのが分かる写真を以下に。

以上が、メスの触角の特徴であるが、蛾の一般的な傾向である雌の方が大きいというのは、この蛾にも当てはまり、雄が前翅長30ミリぐらいといったら、雌が35ミリぐらいではないだろうか。

続いて、雄の触角の特徴が見て取れる写真を以下に。

少しアップしたものを以下に。

確実に両歯状になっているのが分かり、しかも片側の櫛歯は長めである。

以上が、シロヒトリの雄と雌の違いである。

近隣でヒトリガの仲間は擬死の習性を持つものも多いが、ちなみに、擬死すると、どういうメリットがあるのかを確信するような現場には出会したことがない。

キハラゴマダラヒトリ? 成虫 3化目? Spilosoma lubricipedum sangaicum (Walker, [1865])

最近、近隣で見かけて、写真に撮っていた。

大きさは、全翅長2センチちょっとといったところであろうか。

先ず、この蛾を見た時に、「キハラゴマダラヒトリの3化目に出会えたのか?」という感覚が一番最初に来た。

それならば、確実に写真を撮り、捕まえて、腹部の色や脚の色を確かめてみようと思った。そして実行に移したのだが、予定外に逃げ去った。本来、この白ベースのこのサイズのヒトリガの仲間達は、擬死する習性があり、大人しく死んだふりをしてくれるケースが殆どであり、余裕を持って腹部の観察が出来るのだが、今回は、死んだふりはしてくれない個体だったみたいである。

かろうじて、指で摘み損ねている時に、見える腹部は、黄土色に見えた。山吹色の鮮やかさは感じられなかった。ただ、一瞬でも赤っぽい雰囲気は感じられず、やはりキハラゴマダラヒトリなのかなと思った。

では、今年3羽化目と考えられるキハラゴマダラヒトリが、1化目、2化目と異なる特徴はないかと、写真を眺めていると、幾つかの気付きがあった。

一つは、キハラゴマダラヒトリにしては、バランス的に前翅長が長い気がした。

一つは、触角が黒いキハラゴマダラヒトリが多いが、本種は、白っぽい。もちろん、最初は黒で、時間の経過で、むらなく色が落ちるということも、無いとは言えないであろう。(この疑問点に関しては、来年、キハラゴマダラヒトリを見つけたら、黒い触角を筆かなにかで優しく擦ってみて、どれぐらいの擦りで色が落ちるのか、実験してみたく思っている……来年、実験台になってくれる個体には、大変恐縮だが……。)

あとひとつは、細かい事だが、触角の芯の両側が櫛状に見える。1化、2化の個体達は、片側だけ櫛状に見える個体か、よく見ると、先端の方半分が両櫛歯(鋸歯?)に見える個体が殆どだと思う。上の写真の個体は、比較的ハッキリと両櫛状が見て取れて、先端というよりは根本の方に、櫛歯が見えるという、1化、2化とは違う特徴が見て取れる。

うーん……一筋縄では行かないぞ、キハラゴマダラヒトリといった感じである。

ここで、気になったのは……春先に沢山見れたキハラゴマダラヒトリ(1化目)に始まり、数はぐんと少なくなったが、一化目から1ヶ月半後ぐらいの2化目の個体群の少し長い期間の遭遇……そして、運良く目に出来た今回の3化目と思われるキハラゴマダラヒトリの発見。この、3化目のキハラゴマダラヒトリ群が、産んだ卵から孵ったものが、あの一化目の沢山目に出来るキハラゴマダラヒトリ1化目になるのであろうかという事である。

1化目、2化目3化目となる度に、目撃出来る数が減る理由も知りたいが、キハラゴマダラヒトリのライフサイクルは、全ての個体が、1化→2化→3化と規則性を持っているのであろうかという疑惑が少し頭を過っている自分がいる。この疑惑は、さておき、蛾達が、一化目に続く羽化で、紋様や色合いが変わる遺伝の仕組みが、どうして?と思ってしまい、不思議でたまらないと感じている自分がいる。

そして、もし1化目、2化目、3化目と順序を追う度に目撃数が減らないとしたら、春先には、キハラゴマダラヒトリの大量発生となると思えるが……他には、3化目の個体群の孵化後の生存率が高い可能性があるのであろうか?……なんとか、自分なりに突き止めたいものである。

うーん……見てて飽きないキハラゴマダラヒトリ達。来年も宜しくお願いします!