イカリモンガ Pterodecta felderi (Bremer, 1864)

数日前に近隣で見かけた昆虫である。

最初は、見たことがない気がする蝶を発見……と喜び,なんとか写真に撮ったのが以下のものである。

大きさは、少し似たような色合いのベニシジミより一回り大きいといったところであろうか。

早速,片っ端から目ぼしい蝶の科を当たるが、一向にヒットしてこない。同時期に近隣で乱舞しているキタテハに、なんとなく翅の形状が似ていると思い,タテハチョウの仲間を当たるが該当種は現れない。では、シジミチョウの仲間はどうであろうと当たるが、やはり該当種は出てこない。もしかしたら、オレンジ色の上翅は、翅の裏面ではなく,上の写真でいう手前側の上翅の欠損か何かで反対側の上翅の表面が見えているのではと勘ぐり,調べてみるが同じ紋様の翅表(おもて)を持つ蝶は見当たらず。

迷宮入りしそうになったところ,ネット上で、たまたまドンピシャの画像を見つける。恐る恐る、そのウェブサイトを表示してみたところ、納得することとなった。

上の写真の昆虫は、蝶に見えるけど,実はイカリモンガという名の蛾だったのである。そして、なんとなく、イカリモンガという種名に聞き覚えがあったので、自分の過去の投稿を確認したところ,3年前の4月に投稿済みの種であった。ただ、その時の写真よりは、今回の写真の方が、断然に特徴を捉えていると思う。そして、今見返すと、過去の写真は、イカリモンガには見えない気もするので、そのうち訂正しておこうと思う。

ちなみ,この上の写真のイカリモンガの傍らに,もう一個体が飛んでいて、写真に撮ろうと試みたが、ピンボケ過ぎる写真しか撮れなかった。一応,以下にアップロードしておく。

これを見ても分かるように,翅の紋様の変異は多い蛾として知られているようである。

また、種名のイカリモンガというのは、恐らく錨紋蛾と漢字で書くのではと推測したいが、自分には、どの紋が錨に見えるのか、ちょっと分からないでいるのも事実である。

さて、イカリモンガの幼虫の食草は、どうやらシダ科の植物のようである。実際に,このイカリモンガが飛んでいた場所には、シダ類は色々と生えていると思う。

生息分布の方は、国内は、北海道から九州まで生息しているようである。海外の生息分布の方は、朝鮮半島からロシア沿海州南部まで。また領土問題が解決していない竹島やその直ぐ近くにある韓国のウルルン島からの報告や台湾からの報告もあるようである。また、ユーラシア大陸では、揚子江の中上流域やインドの北部の方と,標高の高めの地域からの報告もあるようである。台湾にも高山はあるし,ここで分かるのは、この蛾が、寒い地域に適応していた蛾なんだということかもしれない。

ここで、この蛾の紹介は終わらせたかったのだが、そうは問屋に降ろさせない自分が居た。なんで蛾なのに,蝶のように昼間に花で吸蜜して、止まり方も蝶のように翅を閉じて止まるんだろうとの疑問が、フツフツと芽生えて来てしまったのである。どういう進化の過程にあるんだろうということである。

ただ、答えは、案外とシンプルであった。そもそも,蛾と蝶の境界を人間がハッキリと区別したがるが、グレーゾーンがあるという事である。そうやって考えると,日本にいる蝶と蛾の種数を比較すると圧倒的に蛾の方が多いので、蛾タイプの方が地球上には古くから存在して、このイカリモンガは蝶への進化の途中の種とも考えたくなったが、しっかり裏を取って調べているわけではないので、自分の中では、その考えは現状では憶測でしかない。