ヤハズカミキリ

昨日は、仕事が休みだったので、のんびりと庭の草むしり。ここ2ヶ月ぐらい手付かずだった少しジャングル状態のエリアに飛び込んでみる。すると、生い茂る草むらからは、見たこともないありとあらゆる昆虫が飛び出して来る。

そんな昆虫のひとつがこれ。明らかに初めて見る(意識する)カミキリムシ。

カミキリムシの仲間には、この手のツブツブがあってくすんだ色の種類は多いんだが、外見的に一番似てそうなのはヤハズカミキリかと第一候補の予想を立てる。そこから、細部を照合して行こうと考えていたのだが、ヤハズの意味を調べた時点で、アッサリとヤハズカミキリで間違い無いと断定するまでに至れた。

矢筈の意味→弓の両端の弦を留めかけておくような所謂V字の切れ込みみたいなもの。

この初めて知った知識を基に、もう一度このカミキリムシの写真を眺めてみると、左右の上翅(固い翅)の先端が尖り、真ん中がV字に切れ込んでいるように見えるではないか。大概の甲虫の上翅は、ぴったり隙間無く合わさるものが多い筈である。

同時に、10代の頃を過ごした北九州のとある街の背後に矢筈山という低山が有り、よく登っていたのを思い出した。そして、きっと山頂の形が矢筈だったに違いないと、遠い過去の思い出の山とも、その知識をクロスすることが出来た事に、些細な幸せを感じた。

さて、このヤハズカミキリは、他の方々の画像を見るとピンク色をしている個体が多い。昨日、我が家の庭で見つけたヤハズカミキリは、ピンク色とは表現できない事を認める。蛹から羽化したてが、ピンク色が鮮やかであるとの記事も読んだので、その辺りに、昨日の個体がピンクに見えない理由のひとつが、もしかしたらあるのかもしれない。

ところで、このヤハズカミキリの習性をネット上で調べようと思ったら、ほぼ殆どヒットしない。こういう種こそ、草の根の人達の観察に依り、習性(どういう樹木に産卵されるとか、成虫の食性等)が解明されて行くべきと思い、なんとか推理するんだが、ある程度の確証を持った推測は出来そうも無いので、この投稿においては、何も、このヤハズカミキリの習性に関する私的意見を書かないことにする。

ただ、外見的には似てないが、上翅が同じ矢筈の特徴を持つハイイロヤハズカミキリが、伐採放置された細い枯竹に産卵して、幼虫はその中で育つという習性との類似性はないかという推論は、現時点で持ってみたいと思う……全然違ったりしてね。

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2021年5月10日追記

少し前に、我家の外灯下に、このカミキリが来ていた。その時の写真を以下に。

確かに羽化したてなのか、ピンク色をしたカミキリであった。

クビクロクチバ(成虫)

昨晩の近所の整備された雑木林の散策で写しておいた蛾の種類が分かったので、投稿する事にする。

比較的大きめの蛾の印象。名前の通り、首回りが黒いのが見て取れる。

似た種にナニワクロクビクチバとヒメクロクビクチバが居るとの事だが、ハートマークみたいに見える紋様の上に極小の黒点が有るのが、このクロクビクチバの特徴のようである。ナニワクロクビクチバは、その極小の黒点の所が白点になり、ヒメクロクビクチバは、このクロクビクチバの半分ぐらいのサイズという事である。

また、幼虫の食草は、カヤツリグサ科やイネ科の植物との事である。

私が、ここのところ出かけている近所の雑木林では、滅多に見ない蛾である。ちなみに、その雑木林の蛾生息数(目に付く数)ランキングは、第1位は、文句無しコシロシタバ、第2位は、同率でキシタバフクラスズメ、第3位も同率で、オニベニシタバとウンモンクチバと言った塩梅であろうか。

クツワムシ

昨晩、近所の整備された雑木林に出かけてみた。お目当ては、とあるカミキリムシ。前回、来た時に2匹見つけていたのだが、写真に収める事に失敗していた。

今回は残念ながら、出会うことは出来なかったが、夜の雑木林を散策中、ほぼ終始、かなり大きな音(サウンド)を耳(BGM)にしながらの散策となった。その音は、ジュクジュクジュクジュクジュクというような音が高速で繰り返されてる感じで、とにかく大きな音である。

音の発生源と思われる場所の道路を挟んだ所は、とある工場の敷地なので、虫の鳴き声とは思いながらも、何かしら工場の敷地内から聞こえる機械のモーター音の可能性も頭に入れながら、夜の雑木林を懐中電灯を片手に散策する事を楽しんでいた。

そして、ひと通り散策し終えたところで、その音の発生源の正体を突き止めてみようと、大きな音の鳴る方へと近づいて行った。音の発生場所は、工場の敷地からでは無く、道路を挟んだ反対の林の林縁の低い笹の茂みの中からだった。音の発生場所へと残り1メートルぐらいまで近付いたと思われた時に、その大音響は止まった。あとは、懐中電灯の明かりを頼りに、大音響がしていた辺りを目を凝らして、大音響の主を見つけるのみ。

音の主は、想像より目の前に居た。茶色いかなり大型に見えるキリギリスの仲間。笹の葉が邪魔して、上手く写真が撮れなかったが、なんとか撮った一枚が以下の写真。

直ぐに、これが、クツワムシって奴かという予想は立ったが、家に帰って、耳に焼き付いた鳴き声を照合した結果、やはりクツワムシだと分かった。

そして、このクツワムシを調べていて知った事実に、近年、数を減らしていて、県によっては、絶滅危惧の類に選定されている昆虫という事実があった。元々、太平洋岸では、茨城県や福島県辺りが北限で、日本海側では、新潟県が北限の昆虫という事実を知れた事もさる事ながら、文部省唱歌の「虫の声」にも出て来るこのクツワムシが、もはや、急激にどんどん姿を消しつつある昆虫になっているという事実に、ショックというか少し寂しさを感じた。

ちなみに、私が暮らす茨城県では、クツワムシは、2016年の茨城県のレッドデータの改定で、絶滅危惧種IA類(前回2000年の選定時には、危急種だったので、更に絶滅の危険度がアップした感じ)に選定されている。近隣県の動向を見てみると、茨城県と同じランクなのは、埼玉県、群馬県、新潟県……千葉県や栃木県は、その下のランクのようである。

さてさて、このクツワムシの鳴き声を、個人的に美しいと感じるかと問われたら、トーン的にもメロディー的にも、「そうは思わない」と、現時点の私は答えるのではないだろうか。今から、110年近く前の1910年(明治43年)、尋常小学校読本唱歌に始めて登場した「蟲のこゑ」の時代に、もし、私が生きていたとしても、友達に同意を求めながら同じように答えると思う。ただ、季節を感じさせる風物詩的なサウンドとしては、十分過ぎるぐらいのインパクトを持っている鳴き声だと思う。

話は少し変わるが、この文部省唱歌の選定の歴史を眺めていると、明治維新後の急激な西欧化の風潮の中でも、日本人の繊細な感受性や心は失わないようにしようとの裏テーマの存在に気がつく。

日本の四季を感じさせてくれる虫の声。日本人として、季節を楽しむ心。自然を敏感に感じ取り、調和する心。

クツワムシの衰退の原因のひとつには、そうした日本人の心の変化も、きっとあるんだよね。