コアジサイ Hydrangea hirta (Thunb.) Siebold 茨城県と福島県の県境付近 標高600メートル近辺

茨城県と福島県の県境付近に、植物観察をするお気に入りの場所があり,先週末に出かけてみた。

別に此処にしか無い珍しい植物ではないが、逆に茨城県の山なら普通に見ることが出来る植物である。

種名は、コアジサイ。

大概見かけるのは、このような軸が紫色がかっていて、花も薄紫っぽくて、葉っぱが、その場の他の植物達と比べると薄い黄緑色をしている個体達である。

ここで、このコアジサイの生息分布を調べていて興味を惹かれたのは、日本国内にしか生息してなくて、国内でもざっと関東以西から九州にかけて生息しているという点である。今回の個体の写真を撮った場所は、茨城県と福島県の県境より少し福島県に入った辺りだったが、この辺りは,まだ温帯の植物も生息しているエリアなのかという点も気に留まった。

このコアジサイの思い出としては、昨年,他の茨城の山で見かけた葉の色が薄く煤けた感じのコアジサイが気に入り,挿木をしてみようと枝を数本持ち帰って来たことがあった。細枝だったが、活着率は高く,2本ほどが根をしっかり出したのだが、今年,その差したコアジサイから出て来た葉っぱは、山で見たようななんとも言えない淡い色合いとは違い、普通の黄緑の葉っぱであった。まぁ、よくあることかもしれない。

ウツギ

近隣の田園地帯を散歩していると、田んぼのすぐ傍の畔とかに、時に一株だけ、時に並んで同じ木が植っているのが目に入って来ることがよくある。

前々から、なんで?と気になっていたが、その叢生した背丈2-3メートルぐらいの株達が、5月の終わりに白い花を一斉に咲かせている瞬間を見た時に、ウツギの花だと気が付く事になる。ウツギは、漢字で書くと空木が相応しく、これは茎の内部が中空である事から来ているらしい。

今回の投稿は、全然タイムリーな投稿ではないが、どうして、田んぼや畑の端にウツギが植えられているかが先ほど分かったので、忘れないうちに、ウツギの投稿をしてみようと思った次第である。

そもそも、ウツギが田や畑の端に植えられている理由は、境木としてウツギを植える風習が過去にあったところから来ている。この境木としては、私が住む茨城県では、ウツギが一番好まれ、他にもウツギ程ではないが、カマツカやマユミやお茶の木なんかも用いられたようである。そして、これらの選ばれる木は、地域や地方によって違いがあるようである。

茨城県常総市出身の作家、長塚節の『土』の中で、ウツギを境木と描写する記述があると書かれていた方がいたので、少なくとも大正時代には、ウツギを境木として植える風習はあったと思われる。

ここで疑問が湧いてきた。現在、田園地帯で見かけれるウツギは、いつの時代に植えられたものなのであろうかと。明治や大正に植えられたものが、100年以上経つ現在も生きているのであろうかと?

とにかく、この境木を植える風習や境木の存在を知れたことは、俄然、私の田園散歩を楽しくしてくれる事は間違いないと思う。少なくとも、ある程度昔の風習を知らない限り、今のお米農家が境木を植えたり、大切にしたりはしないと予想出来る。言い換えるなら、これらを残している田んぼや畑は、昔からの繋がりを連想出来るし、その区画内の植っている場所に法則性みたいなものも見出せるのではと期待が膨らむ。

また、田んぼや畑の近くに時たま生えているマユミ(境木に使われる)の意味というか関連性も繋がった気がする。

近隣の田園地帯を廻れば、おそらく、この境木の好みの地理的法則性が見出せるのではと思うので、これによって、ある程度、村と村の交流の歴史や範囲も見えて来るのではと想像している。

俄然、田園地帯の散歩が楽しくなってきた気がする。