ヒミズ Urotrichus talpoides (Temminck, 1841)

珍しく哺乳類の投稿である。

数日前に我家のコンクリートの駐車エリア上で息絶えていた。一瞬、モグラと思ったが、あまりにも小さい。

腹側から写した写真をもう一枚。

大きさは、尾長を入れないで、60ミリぐらいしかなかった。

種名は、おそらくヒミズ(日見不)と思われる。近似種にヒメヒミズというのが居るらしいが、ヒメヒミズは、もっと標高の高いところに生息しているとのことである。

ヒミズの平均サイズが、90-110ミリぐらいであり、今回の個体は、ヒミズにしては小さいが、幼体の可能性もあるだろうし、尾の太さや毛の色合いや生息環境を考慮すると、ヒミズの方であろうと思いたい。

前々から、モグラとは違うが、モグラのような生態を持った哺乳類が、我家の庭には生息している予感はしていた。根拠は、庭に無造作に置いた木の板やブロック等を退けると、その退けた後に、明らかに小型のモグラが使っていそうな細い通路が見られることがあったからである。また、そんな半地中みたいな浅過ぎるところに通路が作られている事と、その近辺に、明らかにその小動物が出入りしていそうな穴が、時々、草むしりの際に目に留まることもあったからである。私は、てっきりモグラの放棄した坑道を利用しながら、地ネズミの類が住み着いているのかもしれないとの仮説は持っていた。

そして、今回、その地中生活をしている小動物の一つがヒミズだと確信できたわけである。

ただ、地ネズミの類も生息していないとは言い切れない。地元では、時々、地べたの障害物を退けると、穴に潜り込んでいく小動物に出会うことがあるが、物凄い速いのもいれば、目に焼き付く残像が、ヒミズのような黒ではなく、もうちょっと明るい色の小動物も見るからである。

今回、我家の庭で息絶えていたヒミズは、死んでから間もない個体だったと連想する。と言うのも、1、2時間前にその場所を通った時には、その個体はその場所には無かったように記憶しているからである。

きっと、移動の途中で、ヒミズからすると想像以上に温度の高かったコンクリートの上で息絶えてしまったのかなとも想像する。

では、このヒミズは、いつ頃から我家の庭に住み着いていたのかと推測するに、我家がこの土地を購入する以前は、棲息していなかったのではと思いたい。理由は、元々は、除草剤を撒いて管理されていたような草原の空き地であり、土は固く詰まったガチガチの土壌であった。その後、樹木を植え、その落ち葉も積もり、みるみる土壌が改良されて、フカフカの土に戻っていったのを覚えている。また、私が、落ち葉をそのままに放置するタイプだったので、まさに落ち葉の下で半地下生活をしているようなヒミズには好環境だったんだと思われる。

しかし、昨年ぐらいから、庭の雑草管理の観点から、落ち葉を掻いて、ところどころ除草剤も撒くようになってしまったのである。そういった点では、ヒミズの好むような環境が減って来ていた矢先の出来事であった。

また、話は少し飛躍するが、昨年からオスの地域猫が庭を我が物顔で徘徊するようになっていた。ある日、窓越しに、その猫を眺めていると、不自然な場所の地面に、じっと長時間座り続ける光景が目に入って来た。いくら我家の庭が気に入ったとしても、不思議だと思い、猫の視線の先を注視すると、2メートルぐらい先の小さなモグラ塚が少し動いているのが見えた。この時は塚の主のモグラを猫が捕まえることはなかったが、この猫が、ヒミズが地表との出入りする小穴の近くで、待ち構えてヒミズを捕まえている可能性は大いにあるなとも推測している。

最後に、ヒミズの生息分布を記しておく。エッて思ったが、どうも国内固有種のようである。本州から九州まで分布しており、対馬や隠岐といった島嶼にも生息しているとのことである。なお、都道府県が独自に定めるレッドリストでは、千葉県が準絶滅危惧種に、東京都と鹿児島県が動向を気にしているような扱いの種に指定している。

一方、近似種のヒメヒミズ(Dymecodon pilirostris True, 1886)も、国内固有種のようであるが、明らかに1000メートル以上といったような亜高山帯で見られる種のようである。その傾向を知っているのかは分からないが、17もの都道府県が、上は絶滅危惧Ⅰ類を筆頭に、何らかのレッドリストの括りに登録している。(元々、標高の低かったり、気温が高めの都道府県には、それほど生息していない種の可能性もあるような気はする。)

チュウサギ Ardea intermedia (Wagler, 1829)

近隣で、白いサギはよく見かけるが、名前をしっかりとちゃんと調べてみたのは初めてかもしれない。

野生の鳥の警戒心はなかなかのものであるが、よく見かける白い鷺達でさへ、いや、よく見かける白い鷺達の警戒心は結構なもので、ずいぶん遠くからでも人の気配を感じると移動してしまうものが多い。

今回は、珍しく、10メートル圏内に近付けた。車を降りなかった事も功を奏したかもしれない。

この手の鳥類の大きさを表現する時に、どこからどこの距離で表現したら良いのか分からないので、表現し難いが、同じく、近隣でよく見かけるコサギと同じようなサイズに感じた。

多分、写真を撮っていなければ、コサギがいるぐらいの感覚で、側を通り過ぎてたに違いない。

ただ、写真を見返すと、コサギの独特の頭部の後ろの飾り羽や、背中の後方の長く伸びた飾り翅のふわふわ感も無い気がする。

こうして来ると、これがチュウサギかと思い、調べ始めたのだが、コサギの場合は、絶対的に、脚の指が黄色のようである。水面から出ている脚の先を見ると、ここで、コサギではないということが分かる。ちなみに、上の写真で黒く見える嘴は、チュウサギの場合は、冬季になると黄色くなるようである。

もうこの時点で、チュウサギと断定して良いと判断した。近隣には、ダイサギという白鷺もいるが、彼らは、もっと全然大きい気がする。嘴に関しては、チュウサギが1番ずんぐりとしていて、コサギやダイサギの嘴の方が、細く鋭い。

さて、このチュウサギの生息分布は、日本に生息する昆虫の生物地理学的な分布を眺めることに慣れて来ている自分からは、興味深いものだった。というのは、日本の昆虫に関しては、旧北区というユーラシア大陸の温帯以北に拡がっている種が多く、ゆえにヨーロッパとの共通性が多い種が多いが、鳥類というのには、その傾向は当てはまらないんだということを知る事になった。

このチュウサギは、生物地理学的にエチオピア区)と東洋区(インドや東南アジアの辺り)とオセアニア区に大繁栄している種と分かった。日本の領土辺りが北限の鳥であることも分かった。

そして、この白鷺達やアマサギを見てて思うのは、警戒心は強いものの、人間との結び付きは重要視している気がするのである。今回も餌を取りやすい田んぼという人位的な環境に集まって来ているし、まだ勘の状態だが、広大な新田の中より、近くに民家(集落)がある田んぼの方が、よく見かける気がしている。この辺の原因も、少しづつ感じていければなと思う。

ブルーギル

数日前に、近所の用水路の終点で捕まえた。1,5メートル四方のコンクリートの枡を網でさらった時に、何か大きな魚が入ってきた感覚があった。

引き上げてみると、この魚であった。

この写真の個体は、体長17センチぐらいだった。ブルーギルとしては、大きい方だと思う。

この魚種との初めての出会いは、小学校6年生の秋に転校先の北九州の野池が初であった。転校前の関東時代には、ブルーギルは、伊豆の一碧湖にしかいないぞぐらいに思っていたから、遠く九州の地に既に繁殖している事を知り、感動したものだった。

しかし、九州の野池には既に沢山いて、中には、ブラックバスは居ないけど、ブルーギルはいるみたいな野池も沢山存在した。

その後は、特定外来生物に指定されて、少しづつ姿を見なくなり始めた最近まで、公園の管理された池から平地の至る所の水系で、普通に沢山見れた。

最近は、近隣では、明らかに減って来ている気はするが……

ところで、今回は、九州の新しいお友達と初めてブルーギルを釣りに行った日の思い出を回想してみようと思う。

私が、釣りや生き物が趣味と知ると、その学校の新しい友達から、山あいの霊園に付属した大きめな池にブルーギル釣りに誘われた。手ぶらで良いので、集合場所に自転車で来るように言われた。

集合場所に現れた少年達は、誰も釣竿は愚か釣り道具も持っていない。持参していたのは、駄菓子屋で100円で買える網とバケツのワンセットだった。

今日は、釣りに呼ばれてるんだよなと半信半疑着いて行くと、山間に澄み切った水を湛えた綺麗な池が現れた。その時の友達らが、共同作業でした事は、先ず背の低い竹(笹?)が生える林で、適当な竿になりそうな竹(笹)を見つける。

続いて、宙を見上げて、池に迫り出した樹木に絡む釣り糸や浮きや針を、あらゆる手段を使い回収する。そして、その糸を歯で食いちぎり、結び直して仕掛けにする。

餌はどうするのかと思ったら、駆け上がりにビッシリと付くヨシノボリの稚魚を網で救い、針に付ける。

あとは、ブルーギルの入れ食いである。そしてその日、誰が言ったか、その一連の流れを、ポチョン……ググッー……ザバァーと擬態語にして釣り始めたのである。ポチョンと仕掛けを投げ入れた瞬間にググって引があり、ザバァーと釣り上げるという意味である。

その地に引っ越す前には、お小遣いが出る度に、大型釣具店に釣り道具を買いに出かけ揃えていた自分からすると、目から鱗で、本当に、この新しい友達らの感覚がクールに映った。その日以降は、「今日学校終わったら、ポチョン・ググー・ザバァー行く?」が合言葉として使われるようになった。

さて、この現地調達の工夫に満ちた逞しいスタイルは、その後、私は海釣りの場で一人で進化させていった。釣りを初めたがっている友達が居ると、近所の海の岸壁に誘ったものだった。当然、バケツしか持たない自分の姿を見て、初めて釣りをしに来た友達は不審そうな顔をしているのだが、一瞬で、釣り人達の捨てていった釣り道具を解き、(海の場合は、割れた瓶の破片が沢山あるので、それをナイフがわりに)、仕掛けを作り、海に投げ入れるのであった。餌は、岸壁に幾らでも居たフナムシ。 入れ食いとまでは行かないまでも、クロ(メジナの子供)やアイナメが適度に釣れてきたものだった。

釣り人のマナーが悪かったから出来た子供の釣りスタイルだが、今の子供達にも、自然の中で創意工夫に満ちた遊びを忘れさせないで欲しい。