ウスバフユシャク? 雄 Inurois fletcheri Inoue, 1954 2nd

最近、コンビニの駐車場で停車中に、少し離れたアスファルトの上を、白っぽい落ち葉のようなものが舞っては落ち、舞っては落ちの繰り返しをしている光景を目にした。最初のうちは、蛾なのか落葉の欠けらなのか確証が持てなかったが、無風に近い日に、単体で舞っていることから、蛾に違いないと思い、車中に出て歩み寄り写真に撮ってみた。

そして、おそらく、今年になって初めて出会った生体の昆虫であるとも思った。

大きさは、前翅長で12ミリぐらい。

この時期に活動出来ていることから、フユシャクの仲間であろうとは想像が付くが、近隣で、これまで出会ったフユシャク達を思い返すと、紋様の個体変異が大きいのか、種を特定する際に紛らわしい個体が多いようなイメージを持っている。(もしかしたら、個体変異ではなく、個体群変異ではないかと思い始めている今日この頃である。)

と言う事で、上の写真の個体もウスバフユシャクと思うのだが、タイトルには、一応、ウスバフユシャク?とクエスチョンマークを付ける慎重さを持ってみた。ウスバフユシャクの特徴として、外横線の外側に白いラインが隣接していると紹介されている方が居たが、確かに上の写真の個体には、その部分にハッキリと白いラインが見て取れる。

さて、このウスバフユシャクの生息分布だが、ちょっと調べたら、日本以外では見られないようである。きっと海外には、そっくりで違う学名のフユシャクが存在するんだと思われる。

また、日本の生息分布も、暖かい地域より冷涼な時期がある地域に多いのではと予測している。(現段階では、しっかりと裏は取っていないが、地球温暖化傾向の昨今、生息数や生息域にどういう変化が現れているのであろうと興味も湧く。)

ところで、このフユシャク亜科の蛾の大きな特徴として、雌に翅がない事が挙げられる。翅がない事のメリットと言うと、しっかり調べてはいないが、私の経験上、落葉して明るくなった見通しのスッキリした雑木林で、春先に活動し始めた蛾が一旦飛んでしまうと、一瞬で何処かの枝に止まっていた鳥達に発見されて空中で見事に捕食される場面を多く見ているので、幹上で目立たない行動をしている事は、良い生き残り戦略のような気はする。

さて、最後に、3回目のフユシャク亜科の蛾の投稿に当たって、この雌に翅がないという事実から起こり得る事態が、漠然とではあるが、私の頭の中に浮かび始めた。この翅のないフユシャクの仲間の雌が、一生のうちに何百メートルも歩いて移動するとは考えにくいのである。現代では、雑木林の近くの落ち葉を腐葉土作りにと大きなビニール袋に入れて持ち帰っている人達も目にするが、基本的に自らの意思による移動の殆ど考えれれない種なのかなと思いたい。

そうなって来ると、孤立した雑木林に暮らすフユシャク亜科の蛾達は、雑木林が開発等で消滅する際には、生き残り難い種なのかなとも思いたいし、今、見掛けれるフユシャク亜科の蛾達は、人間がその地に現れるずーっとずーっと前の太古から、その地で繁殖し続けている昆虫なのかなと思えたりして、昆虫って奥が深いなぁと感じてしまう本年1回目の投稿となった。

オオシラホシアツバ 成虫 Edessena hamada (Felder & Rogenhofer, 1874) 2

昨晩、我家の外灯下に来ていた蛾の一つである。

先ずは、種名は、オオシラホシアツバ。昨年の同時期にも、投稿しているのだが、今回はもうちょっと寄った写真が撮れたのと、ある程度正確なサイズ比較が出来る写真を撮ってみたので、再投稿してみる。

さて、大きさは、大きかった。具体的な数値は、以下の写真で確認していただければと思う。

開張サイズで5センチ弱ぐらいあるのが、確認できる。

幼虫の食草は、ブナ科のクヌギ等らしい。

ここで、この蛾に関して、気になる疑問が生まれた。この蛾が属するクルマアツバ亜科の蛾達(私が出会う種達)は、上翅を閉じて下翅が見えないように止まる種が多いが、このオオシラホシアツバや類似種のマルシラホシアツバは、上の写真のような状態で写真に取られている個体が多いのである。

これって何でと言うか、その差は、何処から来てるのと気になり始めた。

ゆっくり、時々、考えて行こうと思う。

イネキンウワバ 成虫 Plusia festucae (Linnaeus, 1758) 1

最近、近隣で、この蛾を見かけて、写真に撮っていた。

大きさは、前翅長1センチぐらいだった。

頭部が特徴的で、このサイズの蛾で、今回のような場所で見かける蛾は、ヤガ科キンウワバ亜科の蛾であろうとの前知識は身について来ていたので、そのキンウワバ亜科を当たると、イネキンウワバという種だと判明した。

イネキンウワバというが、イネ科の植物全般、イグサ科、アヤメ科、アブラナ科、カヤツリグサ科というように、大概の植物は、いざとなったら食べれるようである。

ところで、この蛾も、学名の登録年が古いが、ヨーロッパ全土(興味深いのはかなり北部の方も)に生息していて、世界の中での生息分布を眺めた時に、凄く興味深い生息域に気がつく事になった。(後半出てくるトビスジアツバも、似ている。)

イネキンウワバと言うぐらいだから、調べるまでは、世界の稲作地帯に、拡がっていることを推測したが、全然そんなことはなく、かなりの高緯度(バイカル湖や樺太の北端)付近の緯度にヨーロッパからアジアへと続く道筋が見えてくるのである。ちなみに、所謂、ヨーロッパとアジアをペルシャ経由で結ぶシルクロードは、遥か南を通っている。(そのシルクロード上では、南ヨーロッパからペルシャ辺りまでは生息を確認出来ている。)

では、何の道というと、ちょうどロシアのシベリア鉄道が通ってるラインと被る気がする。

さぁ、このイネキンウワバは、日本にどうやって入って来たんだろう?

最後に、Plusia festucae (Linnaeus, 1758)の学名で認識されている蛾が、日本とヨーロッパで同一かという初歩的な視点に立ってみたく、海外の画像を調べてみた。うん、同じに見える。

この作業が、必要と思う理由は、ヨーロッパにも沢山いるトビスジアツバHerminia tarsicrinalis (Knoch, 1782)が、どう見ても、ヨーロッパと日本で、同じ蛾を指してるように見えない時があるからである。海外のトビスジアツバHerminia tarsicrinalis (Knoch, 1782)の内横線は、真っ直ぐに見える写真が多く、和名で言うところのウスキミスジアツバに近い気がするが、ウスキミスジアツバと違うのは、中横線のところのボヤけた帯は見える個体が多い気がする。今度、じっくり調べてみようと考える。

話は少し脱船したが、イネキンウワバ。イネの生育環境とは呼応せず、少し寒いところの蛾のようである。