ウストビモンナミシャク Eulithis ledereri (Bremer, 1864)

一週間ほど前に、近隣で見かけて写真に撮っていた蛾である。

大きさは、前翅長17ミリぐらいであったであろうか。

種名は、ウストビモンナミシャク。

この蛾の幼虫が好む食草は、ブドウ科の植物のようであるが、この蛾を見かけた辺りで、ブドウ科の植物と言えば、ヤブガラシだと思う。

生息分布の方は、国内は、北海道から対馬含む九州まで。海外は、朝鮮半島からロシア沿海州南部まで生息しているようである。世界的に見ると,結構局所的な生息分布にも感じる。

目撃情報の多くを見てみると,6月/7月辺りと10月辺りの年2回発生しているのが分かる。

ところで、この写真でも分かるように,腹部を反り返すように、とても特徴的な止まり方をしているのが見て取れる。そして、その止まり方の背後にある理由が気になる。同じ属(Eulithis)にもう一種存在するのだが、そちらのヨコジマナミシャクという種も、同じ行動を取るのが知られている。

そして、その行動の理由に言及するサイトはあまり無い気がするが、多くの蛾を見ていると,ツトガ科のノメイガ亜科の蛾なんかの中にも腹部を少し反り返す行動をしているのに出くわすことがある。腹部先端の尖り具合から、雄のような気もする。また、以下に腹部の先端の形状が分かりやすい写真をアップしてみようと思うが、スズメガ科の蛾の中では、その腹部の先端部分の形状を一瞬で変化させる場面を目撃したりした事もある。

スズメガ科の蛾の腹部先端の瞬時の形状変化は、フェロモン放出と関係があるみたいな記事を読んだ記憶があるが、果たして、このウストビモンナミシャクやヨコジマナミシャクの腹部を極端に反り返す行動も同じような意味合いを持つのかは分からない。

エサキモンキツノカメムシ Sastragala esakii (Hasegawa, 1959)

本日、夕方見つけたカメムシである。

大きさは、体長10ミリぐらいだったのではないだろうか。

クリかクヌギの葉の上にいたのだが、一眼見た瞬間に、ハート型の紋が目に飛び込んで来た。同時に,出会いたかった初めて出会うカメムシだとも気が付いた。

種名は、エサキモンキツノカメムシだと思われる。

幼虫も成虫もミズキ,ハゼノキ、カラスザンショウ、サンショウの汁を好むようであるが、今回、このエサキモンキツノカメムシがいた場所だと,ヤマハぜやハゼノキがホストであると思われる。

生息分布の方は、国内は、北は北海道から九州を経て、奄美大島辺りまで生息しているようである。海外の生息分布の方は、朝鮮半島や台湾にも生息しており,中国にも広く生息している模様。

凄く似た種に、モンキツノカメムシ(Sastragala scutellata (Scott, 1874))がいるが、こちらは、日本においても、朝鮮半島や台湾からもエサキモンキツノカメムシ程ではなく生息報告が上がっている。しかし,この両種の生息分布の違いからは、この2種がどのように種分化したのかを簡単に読み解くことは難しそうである。

とにかく,近隣では、もう出会っていないカメムシはいないであろうと思っていたが、今回のように嬉しい意外な出会いがあるのも、昆虫の世界の不思議で面白いところかもしれない。

ジャコウアゲハ 雄? Byasa alcinous alcinous (Klug, 1836)

数日前に自宅の庭で写真に撮影した蝶である。

その数日前から、小さめの黒いアゲハチョウの仲間が飛んでいるなということには気が付いていたが、休みのこの日は、なんとか葉に止まり休息している瞬間を写真に押さえた。

この蝶の印象として、黒いアゲハチョウの仲間にしては小さいなという感覚があった。

そして、黒いアゲハチョウに見られるオレンジ色の部分が目立たず、一見すると黒一色に見えると感じていた。

調べたところ,ジャコウアゲハという蝶である事が分かったのと同時に,会いたかった蝶ではないかと、嬉しく感じた。

なかなか近隣で飛んでいるのを目撃出来なかった蝶なので、ちゃんと身近に生息している事が分かったことは大きな収穫であった。

翅裏が見える写真も,以下に。

さて、このジャコウアゲハの食草は、ウマノスズクサの仲間である。

どうもウマノスズクサ自体は、河原とかに生えている蔓性の植物らしいが、現時点で、私は河原の中で、これがウマノスズクサと言うふうに見分けることは出来ないと思う。似ているような雰囲気の蔓植物が混在しているからである。

生息分布の方は、国内は、本州以南……南西諸島まで生息しているのだが、南西諸島のものは、幾つかの亜種に分類されているようである。海外の生息分布は、朝鮮半島、ロシア沿海州南部、中国の東部の一部からの生息報告があるようだが、こちらも微妙な違いがある可能性は感じる。

ところで、ジャコウアゲハの名の由来は、雄が麝香の匂いを発するかららしい。

また、ウマノスズクサという植物は、根に有毒成分を持つ事が知られている植物だが、そのウマノスズクサを食べる幼虫も体内に毒の成分を溜め込むようである。ゆえに、ジャコウアゲハの幼虫を捕食してしまった鳥達等は、毒の成分を嫌がって吐き出してしまうとのことである。

その特徴を真似ようと,アゲハモドキという蛾が存在するというから、これまた興味をそそる情報である。