ミノウスバ 成虫 Pryeria sinica (Moore, 1877)

本日,庭の手入れをしている時に見つけた。最初は、スカシバの仲間かと思ったが、直ぐに、「いやいや……これがアイツであろう」との予感がした。

そして、ポケットに入っていたスマホのカメラで、逃げられないように慎重に写真に撮った。

大きさは、触角を入れない体長で12ミリぐらいだった。

自分がアイツと睨んだのは、ミノウスバの成虫である。初夏に幼虫には嫌というほど出会えるのに,これまで一度も成虫の姿を見た事がなかったとても出会いたかった蛾である。ちなみに,触角が櫛歯状なのは雄らしいので、上の写真の個体は雄であろう。

まさかこんな晩秋に羽化する蛾だと思わなかった。それもそのはず,このミノウスバの幼虫が、ニシキギ科の植物(我が家には、マサキやニシキギやマユミが生えているが、圧倒的にマユミ)で大量発生した後、夏前には地面を移動する姿を最後に,その姿は見なくなるのである。ということは、晩秋に羽化するまで4ヶ月近く蛹でいるのかと推測する。

さて、このミノウスバの生息分布は、国内は北海道から対馬含む九州までいるようである。海外の生息分布は、朝鮮半島,台湾,中国の東北部。このことから極東アジアの温帯域で進化した蛾なのが分かる。

幼虫の数からしたら、そこかしこで成虫の姿を見ても良さげだが、今まで成虫の姿を見たことは無かった。あれほど沢山いた幼虫も、蛹時代に数を減らしてしまうのであろうか。

イカリモンガ Pterodecta felderi (Bremer, 1864)

数日前に近隣で見かけた昆虫である。

最初は、見たことがない気がする蝶を発見……と喜び,なんとか写真に撮ったのが以下のものである。

大きさは、少し似たような色合いのベニシジミより一回り大きいといったところであろうか。

早速,片っ端から目ぼしい蝶の科を当たるが、一向にヒットしてこない。同時期に近隣で乱舞しているキタテハに、なんとなく翅の形状が似ていると思い,タテハチョウの仲間を当たるが該当種は現れない。では、シジミチョウの仲間はどうであろうと当たるが、やはり該当種は出てこない。もしかしたら、オレンジ色の上翅は、翅の裏面ではなく,上の写真でいう手前側の上翅の欠損か何かで反対側の上翅の表面が見えているのではと勘ぐり,調べてみるが同じ紋様の翅表(おもて)を持つ蝶は見当たらず。

迷宮入りしそうになったところ,ネット上で、たまたまドンピシャの画像を見つける。恐る恐る、そのウェブサイトを表示してみたところ、納得することとなった。

上の写真の昆虫は、蝶に見えるけど,実はイカリモンガという名の蛾だったのである。そして、なんとなく、イカリモンガという種名に聞き覚えがあったので、自分の過去の投稿を確認したところ,3年前の4月に投稿済みの種であった。ただ、その時の写真よりは、今回の写真の方が、断然に特徴を捉えていると思う。そして、今見返すと、過去の写真は、イカリモンガには見えない気もするので、そのうち訂正しておこうと思う。

ちなみ,この上の写真のイカリモンガの傍らに,もう一個体が飛んでいて、写真に撮ろうと試みたが、ピンボケ過ぎる写真しか撮れなかった。一応,以下にアップロードしておく。

これを見ても分かるように,翅の紋様の変異は多い蛾として知られているようである。

また、種名のイカリモンガというのは、恐らく錨紋蛾と漢字で書くのではと推測したいが、自分には、どの紋が錨に見えるのか、ちょっと分からないでいるのも事実である。

さて、イカリモンガの幼虫の食草は、どうやらシダ科の植物のようである。実際に,このイカリモンガが飛んでいた場所には、シダ類は色々と生えていると思う。

生息分布の方は、国内は、北海道から九州まで生息しているようである。海外の生息分布の方は、朝鮮半島からロシア沿海州南部まで。また領土問題が解決していない竹島やその直ぐ近くにある韓国のウルルン島からの報告や台湾からの報告もあるようである。また、ユーラシア大陸では、揚子江の中上流域やインドの北部の方と,標高の高めの地域からの報告もあるようである。台湾にも高山はあるし,ここで分かるのは、この蛾が、寒い地域に適応していた蛾なんだということかもしれない。

ここで、この蛾の紹介は終わらせたかったのだが、そうは問屋に降ろさせない自分が居た。なんで蛾なのに,蝶のように昼間に花で吸蜜して、止まり方も蝶のように翅を閉じて止まるんだろうとの疑問が、フツフツと芽生えて来てしまったのである。どういう進化の過程にあるんだろうということである。

ただ、答えは、案外とシンプルであった。そもそも,蛾と蝶の境界を人間がハッキリと区別したがるが、グレーゾーンがあるという事である。そうやって考えると,日本にいる蝶と蛾の種数を比較すると圧倒的に蛾の方が多いので、蛾タイプの方が地球上には古くから存在して、このイカリモンガは蝶への進化の途中の種とも考えたくなったが、しっかり裏を取って調べているわけではないので、自分の中では、その考えは現状では憶測でしかない。

クロモンシタバ 成虫 Ophiusa tirhaca (Cramer, 1777)

最近、近隣で見かけた蛾の一つである。

第一印象は、派手で大きいというものだった。

サイズは、前翅長で33ミリぐらいありそう。

見た感じ,ヤガ科の蛾に見えるが、それにしては,少し大きい気がした。直ぐに調べたところ,ヤガ科シタバガ亜科に属するクロモンシタバと判明。

シタバガ亜科の蛾達は、大きい蛾が多いのを知ってるので、これなら納得である。また、下翅(シタバ)は、この亜科に属する蛾達の特徴に則り、より派手な色合いのことである。クロモンシタバの場合は、濃い山吹色をしているらしい。

さて、このクロモンシタバは、南方系の蛾である。そして、あんまり見かけることが出来ない蛾との情報もあった。私も,今回が初めての遭遇だと認識している。

6月ぐらいから現れ始め、翌年の3月ぐらいまでは目撃されるらしい。ということは、おそらく,11月のこの時期に見つけたこの写真のクロモンシタバは、成虫越冬するものと思われる。

幼虫の食草は、フトモモ科のグァバやウルシ科のヌルデなんかが知られている。

生息分布の方は、国内は、本州以南,九州を経て、沖縄本島含む南西諸島まで生息しているようである。海外の生息分布は、ヨーロッパの地中海沿岸から、アフリカは北の方にもマダガスカルふくむ南の方にも、そして、オーストラリア大陸も沿岸部には。アジアはと言うと、ペルシャ湾岸からインド……東南アジアを経て、日本の暖かい地域まで生息域がある蛾であることを知った。

そして、今回,茨城県の県南にも生息していることを自分のこの目で確かめることが出来た。

地球温暖化で北上中の蛾の一つである。