クロスカシトガリノメイガ 成虫  Cotachena alysoni (Whalley, 1961)2

昨晩、我家の外灯下に来ていた蛾の一つである。

大きさは、開張で25ミリぐらいだったのではないかと思う。

種名は、クロスカシトガリノメイガ。シマメイガ亜科の蛾のように、前脚を立てて止まる傾向があると書かれていた方がいたが、私も同じような印象を持った。ただ、ノメイガ亜科の蛾達の中には、前脚を立て気味で止まっているような印象の蛾は、他にも幾つかいるとは思う。

2年前の7月25日にも投稿しているが、今回の方がより良い写真が撮れたと思うので、再投稿してみた。

幼虫の食草は、ニレ科のエノキ。

この蛾の生息分布は、国内は、本州以南……九州を経て、沖縄含む南西諸島諸島まで。海外の生息分布は、Cotachena (Moore, 1885)属という似た種の集まりで大きくみると、環太平洋の日本からオーストラリアの方までの半環地帯に生息している模様である。

オオイタドリ Polygonum sachalinensei 福島県 標高 800メートル〜1200メートル

先週末に、家族が山登りにお友達と行くというので、私は、一行を登山口で下ろし、下山口で拾うという完全な運転手の役を買って出た。

買って出た理由の一つは、登山口も下山口も標高は1000メートルぐらいあり、待ってる間の5時間(結局は7時間)は、自由に自然観察やイワナ釣りが楽しめるからである。登山一行もスタート地点に戻ってこないコースが取れる事を喜んでくれる。お互いの利害が一致した。

想像以上に豊かな生態系であったが、先ずは気になった植物を種名に辿り着ける限り、紹介してゆこうと思う。

この植物は、標高800メートルぐらいから標高1200メートルぐらいまでの間(それ以上それ以下の標高では観察をしていない)の林縁には、かなり生えていた。

茎の太さや伸び方で、イタドリなのは分かるのだが、普段よく見ている平地のイタドリとは、全然雰囲気が違う。とにかく葉が大きいのと、今回のエリアのイタドリは葉先が尖っていない。

という事で、種名は、オオイタドリ。

本来の分布は、中部地方以北の山岳地帯であるが、それより、西の地域にも拡がっているとの事である。海外では、ヨーロッパ、北米のアメリカ北西部でも生息報告があがっている。ちょっと報告のデータが少ないようである。(皆の関心も少ない植物なのかもしれない。)

ところで、平地でイタドリがあるような場所には、同じタデ科のスイバやギシギシも生えていることが殆どだが、今回の高地では、スイバやギシギシと一目で分かる植物はほとんどなかった。標高800メートルぐらいの温泉地で、道路脇にスイバとギシギシが、こじんまりと生えていたぐらいである。どちらも、古来より自生していたとも考えにくいシチュエーションであった。

トウキョウダルマガエル Pelophylax porosus porosus (Cope, 1868)

本日、家からそう遠くないエリアを散策中に発見して、写真に撮った。

トノサマガエルではなく、トウキョウダルマガエルだと思うのだが……。

そして、近似種のトノサマガエルが多くの県のレッドデータに登録されているのと同様に、このトウキョウダルマガエルも、東京都と千葉県が、絶滅危惧Ⅰ類に、長野県、新潟県、群馬県が、絶滅危惧Ⅱ類に、埼玉県、栃木県、福島県、宮城県が、準絶滅危惧種に指定している。

確かに、昔は、水田の蛙の代名詞であったこれらのトノサマガエル系のカエルも、近隣でも全ての田んぼにいるわけではなく、居ない田んぼの方が圧倒的に多いのではと感じる。

ところで、トノサマガエル系という言葉を使ったのには訳があって、昔は、トノサマガエル一種だと思われていたのだったが、トウキョウダルマガエルとナゴヤダルマガエルの2種が別種として独立したのである。私も、10年ぐらい前までは、トウキョウダルマガエルという名前すら知らなかった。

そして、これらの3種の簡単な地理的棲み分けは、関東近県が、トウキョウダルマガエル……東海地方がナゴヤダルマガエル……それ以外の西の地方や日本海側は、トノサマガエルの領域である。北海道には、本来いないカエルでもある。

上の地理的棲み分けを推理すると、トウキョウダルマガエルやナゴヤダルマガエルの親となるグループが日本へと最初やって来て、日本という環境の中で、日本固有種へと進化していったものと思われる。その後、元々の先祖は同じであろうトノサマガエルという種が大陸から日本へとやって来たと推測できる。ゆえに、後追いしてきたトノサマガエルは、朝鮮半島や中国にも生息しているのであるし、朝鮮半島含む大陸のトノサマガエルと日本のトノサマガエルの間に、それほど差異がないなら、トノサマガエルは、やはり後発の気がするし、移動の歴史の比較的浅さを物語っているような気もする。こういう関係は、淡水魚なんかでも見られる気がする。

そして、この3種は、一応、交雑は出来ることが知られている。交雑したものは、雌は生殖能力が有り、雄は不念となるようである。しかし、そのオスも、戻し交配で元々の親の遺伝子レベルの個体と交配を繰り返すと、生殖能力が復活するらしい。この状況を、素人が普通に考えても、同所に2種が現れると、雑種はどんどんと増えていくのか、そうでもないのか、正直分からないでいる。

ただ、同所に現れると、どうも、弱肉強食の強の個性を身に付けて来ているトノサマガエルが、トウキョウダルマガエルのメスを独占出来る環境が出来てしまい、どんどんとエリアが、トノサマガエル化していくのは事実のようである。

生物の進化や潮流を、凄く長い目で見れば、しょうが無いと言えばしょうがない事のような気もする。

ところで、子供の頃より、トノサマガエル(トウキョウダルマガエル)と言えば、水田に居るといったイメージがあったが、確かに、他のカエル達と比べると、水田依存率が高そうな気がする。ただ、気になるのは、水稲栽培の歴史なんかは、カエル達の歴史から見たら凄く短いものだと思う。

こうなると、アジア系のトノサマガエル群(トノサマガエル、プランシーガエル、ダルマガエル)は、遠い遠い昔は、自然下で、分相応に生息していたのかとも推測したい。それが、人類の進化させた水稲栽培の普及で、急速に勢力を伸ばしていき、今度は、逆に、昨今の日本の米の短期栽培の影響で、オタマジャクシが成長・上陸する前に、乾田となる田んぼが増えて、数が減って来ているカエルなのかもしれない。

長い目で見れば、ひっそり何処かの環境で種が生き延びてくれれば良いだけで、「昔は沢山いたのに……」とめくじらを立てる人達は、どうも人間スパンで物事を結論づけるのが当たり前になっている姿勢に、先ずは謙虚に目を向ける事が、自然を感じる第一歩かもしれない。