カムルチー (つくば市中部)

古い写真を整理してたら、雷魚の稚魚を捕まえた時の写真が出て来たので、投稿する事にする。撮影年月日は、2013年9月27日となっている。もうかれこれ、7年近く前のことである。捕獲場所は、生態系の濃いお気に入りの水路。その水路にも、かれこれ7年近く行っていない事になる。

いわゆる、ライギョ(雷魚)と言われる魚だが、日本には、タイワンドジョウという南方系の比較的小型中型の種類とカムルチーというシベリア南部まで生息している1メートル以上の大型になる種類が生息している。

上のものが、どっちと言われたら、カムルチーの稚魚だと思う。理由は、3列(2列?)ある班紋様の横列のうちの一つの列の紋様が大きい事(タイワンドジョウは、その班紋様が、列に拘らず比較的均一な大きさである)と、あとは背鰭の条数の数である。偶然、この写真から背鰭の条数が数えやすかったので数えてみたところ、ざっと数えても50近くある。タイワンドジョウは、多くても44までぐらいである。

さて、このカムルチーという日本ぽくない名前の響きに違和感を覚えた人達も多いのではと思うが、この魚は記録では1923年に朝鮮から奈良県に持ち込まれたものが起源で、その後徐々に日本全国へと逸出していったと言われている。ゆえに、このカムルチーという名も朝鮮語なのかなと推測する。当初は、チョウセンナマズとも呼ばれていたらしい。

このカムルチーは、子供の時から雷魚として存在は知っていたが、そんなに身近に出会える魚では無かった。私が成人するまでに暮らした幾つかの地域では、福岡市内の野池や河川で比較的、目撃する事が出来たのを覚えている。ただ、すべての水域に均一に濃く生息していたわけでは無く、ブラックバスも住めるような水質の場所では、ブラックバスに駆逐され、自然と低酸素の劣悪な他の魚が住めないような池や沼だけで生き残っていったようにも思える。(雷魚は水中での鰓呼吸だけでなく、直接空気中の酸素を取り入れることも出来るため、溶存酸素の少ない水域にも生息出来る)ただ、酸素量の豊富そうな河川でも目撃出来たのも事実だった。

また、劣悪な環境でも生息出来る例としては、かれこれ30年近く前になるが、とても暑い夏の日に、東京は溜池山王辺りか、もしかすると桜田門辺りの皇居のお堀だったか、首都高が近くに見えたのは覚えているのだが、水面の睡蓮か蓮の葉の上に、1メートル近い雷魚が彼方此方に大挙横たわっている光景を見て唖然としたのを思い出した。夏場で水中の溶存酸素の量が減り、葉の上に上がり、空気中から直接酸素を取り入れていた姿だと思う。自然の中でもたまにしか出逢わなかった雷魚が、大都会の汚れた環境の中では大繁殖していたのであった。

そんなこんなの雷魚だが、2005年の外来生物法の施行に伴って、要注意外来生物に指定されていたのではと思うが、2015年に見直しが有り、現在は、生態系被害防止対策種にも選ばれていないのではと思う。ただ、都道府県によっては、雷魚の扱いに関して、独自の規制を設けている県が幾つかあるようである。

最後になったが、どの地元にも一つぐらいは、水草ばかりで富栄養に偏った水質で、雷魚ぐらいしか住めない雷魚(モンスター)の聖域となるような沼があった方が、釣り好きの子供たちの夢や好奇心は膨らむのではと思う。そういった観点からも、有識者たちが、慎重な観察・考察の結果、雷魚(カムルチーやタイワンドジョウ)を、外来生物法の対象から外した流れには、私は賛成である。