ヨツモンカメムシ Urochela quadrinotata 群馬県吾妻郡 標高750メートル

最近、この地を訪れた時に見かけたカメムシである。ポツンと佇む一軒宿の館内や露天風呂で多く見かけた。

大きさは、体長14ミリぐらい。

種名は、クヌギカメムシ科に属するヨツモンカメムシ。

北方系のカメムシらしく、山地のニレ科の樹木……オヒョウやハルニレ等に付くらしい。では同じニレ科のケヤキやアキニレなんかは、どうなのであろうとも思った。

生息分布の方はと言うと、国内は、北海道から九州まで。海外は、朝鮮半島からロシア沿海州南部にかけて。台湾と、中国の河北省辺りからの報告が上がっているようである。

北海道以外では、あまり見かけれないカメムシとの情報もあり、都道府県が独自に定めるレッドデータでは、長野県、富山県、兵庫県、島根県が準備絶滅危惧種に指定。埼玉県が絶滅危惧I類に指定している。

11月になったこの時期に見れたのは、越冬準備の為、暖かい場所を探そうと地表近くに降りて来たものと思われる。

ヘラクヌギカメムシ? 福島県安達太良山 標高1000メートル Urostylis annulicornisScott, 1874

先週末、福島県へと紅葉を見に行った際に見かけたカメムシである。

大きさは、体長11ミリといったところであったであろうか。

外気温は、10度は越えておらず、この日、昆虫を見かけた記憶がない中、このカメムシだけが唯一見かけた昆虫かもしれない。

早速、何というカメムシなのか調べ始めたところ、クヌギカメムシのどれかだというところまでは直ぐに行き着けた。では、何というクヌギカメムシなのかという事だが、クヌギカメムシ自体は、近隣の雑木林にもいる春に時々見かけれるカメムシである。ただ、今回は、標高1000メートルといったずいぶん気温が低い場所で見かけているのと、脚の赤さが特徴の種類だと思った。

果たして、標高30メートル前後にある我家の近くで見る事が出来るクヌギカメムシと同種なのであろうか?………ということで、更に調べを進めてみた。

すると、寒い場所にいるのは、ヘラクヌギカメムシとサジクヌギカメムシの2種であり、単なるクヌギカメムシは、本来西日本に生息している暖地系のクヌギカメムシだと分かった。この事から、我家の近辺の雑木林で見ることが出来るクヌギカメムシは、種名の頭に何も付かない単なるクヌギカメムシの可能性が大だと思うようになった。自分の投稿で、そのカメムシをヘラクヌギカメムシ?と投稿しているのを確認したので、そのうち加筆修正しておこうと思う。

ところで、上の写真の個体との出会いで印象に残ったのは、11月の後半の気温が7度ぐらいの高地(標高1000メートル)で、葉っぱの上にいた事である。どうも、この理由は、このカメムシが、この時期に交尾活動をしているかららしい。そして、おそらく、産卵された卵が越冬して、成体は寿命を全うしているのではと推測する。

脚の赤さに関しては、秋が深まり寒くなると、赤くなるようで、夏場には緑色とのことである。ちなみに、平地の近隣で見かけるクヌギカメムシは、主に5月から7月ぐらいまでは見かける気がするが、脚が赤くなっている個体を見かけた記憶は、今のところない。ただ、過去に1月中に近隣の雑木林で見つけたクヌギカメムシ属の卵なる投稿をしているので、近隣の平地でも11月ぐらいまでは、交尾産卵のために生きているものと予測したい。

一応、クヌギカメムシと他のヘラクヌギカメムシやサジクヌギカメムシとの相違点として、幼虫時の色合いに赤い要素が入っているのは、クヌギカメムシであったり、クヌギカメムシの腹部の気門は、黒色だったりとの違いがあるようなので、来年、近隣の雑木林でクヌギカメムシを見かけた時には、確認してみようと思う。

一方で、ヘラクヌギカメムシとサジクヌギカメムシの相違は、生殖器の微妙な違い程度であり、住む環境も外見もとても類似した両種がどう進化したのかは、とても気になると事である。

最後に、上の写真の個体をヘラクヌギカメムシとして、生息分布を眺めてみると、国内は、北海道から九州まで。海外の生息分布は、朝鮮半島とロシア沿海州南部には生息しているものと思われる。参考までに、外見上も生活環境もそっくりなサジクヌギカメムシUrostylis striicornisの生息分布は、海外は、韓国からの生息報告が、ヘラクヌギカメムシほどではないもののあるようである。では、クヌギカメムシUrostylis westwoodii Scott, 1874はと言うと、国内は本州以南、九州までで…‥海外は、やはり韓国からの生息報告があるようである。ただ、何となく想像できるのは、ヘラクヌギカメムシとサジクヌギカメムシの2種は、寒さに順応した高地や冷地に見られる種達で、クヌギカメムシは北関東以南といったような温暖な地域で平地で見られる種なのではないかなとの予測は立つ気がする。

クヌギカメムシ属の卵 Urostylis sp.

ちょっと前に、ウスバフユシャクの投稿をしたが、このウスバフユシャクの雌を見つけてみようと、少し冬枯れの雑木林内を散策してみた。15分程度の散策だったと思う。

生体反応は皆無に等しく、一回だけ、飛翔スピードがある小さな蛾を遠目に目にしただけであった。隣接した人工池(水は湧水である)を、もしかしたらアカガエルの卵でもないかと、氷の隙間を見て回るが、池の方にも生体反応は感じられなかった。

そんな中、無数にあるクヌギの樹肌の割れ目に、生き物らしいものを見つけて写真に撮ってみた。しかし、無数にあるクヌギの木の全てにいるわけではなく、いる木を見つける方が難しいので、早い段階でその木に巡り会えた事は幸運だったと思う。

大きさは、長さ1センチぐらいである。サイドに見える白い毛束のようなものが、蛾の幼虫の毛虫っぽくも見えなくないが、こんな寒い時期にこんなに凸凹した奇妙な幼虫がいるものであろうかとは感じていた。この時点では、逃げたり動いたりといった気配は感じなかったが、それも寒さのせいであろうと思っていた。

帰宅後、直ぐに調べてみたところ、蛾の幼虫ではなく、昆虫の卵である事が分かった。

その昆虫は、クヌギカメムシ属のどれか(一応、日本では、クヌギカメムシ、ヘラクヌギカメムシ、サジクヌギカメムシの3種が知られている)なのだが、確かに、この森にはクヌギカメムシ属の何れかがいるのは知っている。

大体11月ぐらいに産卵され、暖かくなった頃に、この粒々から1匹1匹孵化して来るとのことである。そして、この粒々が栄養満点であるらしく、クヌギカメムシの幼虫は、この卵の中で3齢まで成長して外界へとデビューして来るらしい。ちなみに、サイドに見える白い毛束は、中の幼虫が呼吸するための呼吸官の役割を持っているようである。

クヌギカメムシ属の何れかの成虫の投稿は、過去に、クヌギカメムシ?としてしているので、そちらを参照して頂きたい。

さて、このクヌギカメムシ属の生息分布は、調べてみたのだが、想像以上に情報を見つけられなかった。ただ、国内は、北海道から九州までは生息しているようである。海外は、納得のいく情報に辿り着けなかったが、樺太や千島列島や、朝鮮半島や中国の北東部に生息していると書かれている方もいた。

上記の3種のクヌギカメムシ達も、とても小さな差異で区別されているので、どのような隔たりで独自進化したのか気になるところではあるが、外見的な小さな差異を紹介するページはあっても、どういう背景で、その差異が生まれたのかを追求しようとするページには出会えなかった。想像より難しい種だと知る事になった。

一応、幼虫の時の色が、クヌギカメムシは赤っぽい色が入ってるという事(これは絶対なのであろうか?)なので、最近見つけた卵塊を少し持ち帰って育ててみて、孵化してきた幼虫の色合いを確かめてみたいとは思っているのだが……。