ワキグロサツマノミダマシ Neoscona mellotteei (Simon 1895)

昨晩、我家の外灯下に来ていた蜘蛛の一種である。

はいはい……サツマノミダマシですねと片付けようと思ったが、一応写真に撮っておいた。

大きさは、昨日のことなのだが、ちゃんとチェックしていなかったので、正確な事は言えない。雄が体長、7ミリぐらい……雌が体長9ミリぐらいというのが一般的なサイズらしいが、上の写真の個体は、体型的にメスである事は分かる。オスは、もっと全然腹部が小さく、代わりに頭胸部が長い。

さて、この写真を眺めながら、サツマノミダマシの近似種でワキグロサツマノミダマシという種も居ることが脳裏を過ぎり、もう一度調べてみたところ、上の写真の個体は、ワキグロサツマノミダマシの方だと分かった。

決め手は、腹部の下半分の色だが、この部分が白いラインを境に焦茶色になっているのが分かる。サツマノミダマシの場合は、この部分が薄い色合いである。

さて、このワキグロサツマノミダマシとサツマノミダマシの違いは、他には、出現時期があるようで、サツマノミダマシの方は成虫は、6月から8月に現れ、一方のワキグロサツマノミダマシは、少し遅れて出現して来るみたいな記事も読んだ気がする。

生息分布の方は、ワキグロサツマノミダマシは、国内は、北海道以南……九州近海を経て、沖縄本島含む南西諸島まで。海外は、朝鮮半島や中国東部や台湾に生息しているようである。

一方、サツマノミダマシの方は、本州以南……九州近海を経て、沖縄本島含む南西諸島までといったところのようである。海外は、ワキグロサツマノミダマシと似ている分布だが、ワキグロサツマノミダマシよりは目撃情報が集まっているように感じるのと、香港の近辺に生息報告が集中しているのが気になる。

 この2種の違いも、もっとデータを深掘りすれば、色々な事が見えて来る気がするが、ワキグロサツマノミダマシの方が、寒いところへの適応種のような気はする。

カガリビコモリグモ Arctosa depectinata. (Bösenberg & Strand, 1906)

昨晩、我家の庭にいた蜘蛛である。

大きさに関してだが、体長は、ちょっと分からない。というのも、腹部の上に、卵を産み付けられ、実際の腹部が見えていないからである。

ただ、卵を産み付けられるのは♂であり、オスの腹部は胸部よりも小さいのを知っているので、ここからこの蜘蛛の昨晩の卵を背負った状態での体長が1センチぐらいだった事を考慮して通常時の体長を予測すると、体長5-6ミリの蜘蛛であろうか。まぁ、実際のところ、蜘蛛は手脚の長さがあるから、体長よりは大きく見えるが……。

また、腹部に卵を産み付けられているために、種名の由来であるカガリビ(篝火)の部分が見えていない。

さて、正直なところ、この蜘蛛が卵を背負っていた状態だったから、コモリグモ科の蜘蛛である予測が付き、種名に辿り着いたが、もし卵を背負ってなかったら、種名に辿り付けたか疑わしい。

このカガリビコモリグモの生息分布は、国内は、北海道から九州を経て、南西諸島まで生息しているようである。海外は、ちょっと分からなかった。

コアシダカグモ Sinopoda forcipata (Karsch 1881).

最近、近隣で見かけて写真に撮っていた。

写真だと分かりづらいが、近隣の蜘蛛としては、最大級なのではないだろうか。脚を含めた全長で、10センチ以上あるのではないだろうか。

種名は、アシダカグモかコアシダカグモかで迷ったが、脚の腿節に白い小点があるのは、コアシダカグモの方だという情報を信じて、コアシダカグモの方を種名に選んだ。

さて、この大きなアシダカグモの仲間は、北関東では珍しいのか、見た人が、「凄く大きな蜘蛛がいる!」みたいに感動したり、最近ではSNS に挙げたりしている現場に出くわす。

しかし、数十年前に九州で過ごした事がある自分にとっては、当時、なんちゃなく古い人家の屋内では、ごくごく普通に目にしていた大きな蜘蛛である。そして、当然のごとく、ゴキブリ等を食べてくれる益虫の認識を持っていた。

ただ、確かに成人して関東に出て来てからは、滅多に見ないクモになっていた。自分が想像するこの理由は、きっと南方系のクモなんだろうなという漠然としたものだが、それで、正しいと思う。

今回のコアシダカグモではなく、アシダカグモHeteropoda venatoria(Linnaeus, 1758)の分布を眺めると、東南アジアと中米及びカリブ海の熱帯エリアに濃い生息をしている種なのである。アフリカ大陸に関しては、沿岸部のおそらく港湾都市に集中しており、内陸部からの報告はない。

これから分かるように、中米か東南アジアのどちらかにオリジナルの生息地があるものと思われる。よく、バナナの移動と一緒に、世界へ散らばっていったとも言われている。ちなみに、私が数十年前に、アシダカグモを当たり前に目撃していたのは、過去にはかなりの港湾都市で、バナナの叩き売りを売りにしていた町である。その地区に濃かったのか、隣接する他の九州や中国地方の他の町にも濃く生息していたのかは思い出せない。

では、今回のコアシダカグモ Sinopoda forcipata (Karsch 1881).に関しては、世界では、殆ど認知されておらず、日本ぐらいに生息報告があるぐらいである。おそらく、世界の人達は、この2種を区別していない可能性もあるが、なんとなく、コアシダカグモの方も、南方系の蜘蛛の気はする。

ちなみに、このコアシダカグモは、日本では、東京都と茨城県が、準絶滅危惧種に指定しているが、元々、遠い昔から、この地に生息していた種なのかと疑っている私もいる。

まぁ、結論から言って、これだけ物流始め、人や物の移動が縦横無尽な時代であるので、蜘蛛も、意志とは関係なく移動に付き合わされる可能性はある。

もう少し気温が高い気候になれば、姿を見る機会がどんどんと増えていく生物の一つなのかもしれない。