ツマトリソウ Trientalis europaea L. 福島県 標高 1100メートル

先週末に、家族が山登りにお友達と行くというので、私は、一行を登山口で下ろし、下山口で拾うという完全な運転手の役を買って出た。

買って出た理由の一つは、登山口も下山口も標高は1000メートルぐらいあり、待ってる間の5時間(結局は7時間)は、自由に自然観察やイワナ釣りが楽しめるからである。登山一行もスタート地点に戻ってこないコースが取れる事を喜んでくれる。お互いの利害が一致した。

想像以上に豊かな生態系であったが、先ずは気になった植物を種名に辿り着ける限り、紹介してゆこうと思う。

種名はツマトリソウ。漢字で書くと、褄取草。

上の写真でも、言われてみれば辛うじて見えるかもしれないが、花弁の先の方が微妙にピンク色であり、これを、昔の人が鎧の裾とかを縁取る事を褄を取ると表現した事と掛けて、褄取草と名付けられたようである。

この植物の分布の方は、興味深くて、学名にeuropaeaとヨーロッパを連想させる語句が入っているが、ヨーロッパには、多くの生息報告があり、動物地理学的な旧北区の高緯度地帯には必ず生息しているような植物である。そして千島列島やアリューシャン列島ではなく、更に北の北極圏の近くまで生息しているのか、その北極圏を経由してか、新北区の北米大陸の西岸にも到達しているのである。

段々とパターンが読めてきたのか、寒冷系の植物は日本海側に多く、福島県以北は、寒冷系の生物の領域であることから、このツマトリソウも、同じような生息分布をしていると思われる。

このパターンは、淡水魚を始めとした他の生物でも当てはまっているケースがあり、私が想像するより遥か昔に日本列島にやって来ている生物達が多いのではと思い始めている。日本列島への人類の到来なんて、地球の歴史から考えたら、先ほどの出来事なのかもしれない。

ヌマトラノオ

こないだの週末に、近所の田んぼ脇を歩いているときに、この植物が目に入ってきた。

直ぐに、これが、ヌマトラノオという植物だろうとの予測は付いたが、ちゃんと調べたところ、実際に、ヌマトラノオであった。

さて、この植物がヌマトラノオと直ぐに分かるのには理由があって、既に過去に、同じような田んぼ周りの、もうちょっと乾いた場所に生えるオカトラノオという近縁種の投稿をしているのだが、その際に、ヌマトラノオというもっと湿地好みの種がいる事を学んでいたからである。

ただ、まさにこんなに田んぼの水の中に生育できるとは予想していなかった。ヌマトラノオとオカトラノオの違いを他にも述べると、先ずは葉の形が違う。オカトラノオの葉は、もっと丸みのある菱形といった感じで大きい。一方、このヌマトラノオの葉は、写真でも分かるように、細長い。

他にも、花穂が垂れ下がるのがオカトラノオで、シャンと真っ直ぐに立つのが、ヌマトラノオと考えられている。そういう意味では、上の写真のヌマトラノオは、微妙に花穂が傾げている印象はある。

近隣では、オカトラノオもヌマトラノオも、時々見かける植物であるが、今回みたいな上から見下ろす形ではなく、花穂を横から見れるような場所では、どちらも和風に趣き深さを醸してくれる植物である。