アサマイチモンジ Limenitis glorifica (Fruhstorfer, 1909)

数日前に近隣で見かけた蝶である。生体ではなく、蟻が地面上を運んでいたものを拾い上げて、写真に撮ってみた。

翅裏から視界に入ってきたので、見たことのない紋様の蝶だと思ったが、翅表を見た時に、「なんだ……イチモンジチョウだったか。」と思った。

ただ、イチモンジチョウの翅裏の方は、シッカリと見たことがなかったので、イチモンジチョウの翅裏というタイトルで新投稿をしようとした時に、何か違うという勘が働いた。同時に、イチモンジチョウを検索するたびに、ヒットして来るアサマイチモンジという種が気になり始め、両種の比較をしてみた時に、上の写真の個体が、アサマイチモンジだということに気が付いた。

上の写真の個体は、死後硬直が始まり、翅表を見るために翅を広げるとバラバラに身体が壊れてしまう可能性を感じたので、慎重に慎重に限界まで翅を広げて、掌の上で撮った写真を以下に。

上の2枚目の写真を見ると、いわゆるアサマイチモンジの翅表の特徴なのである。

ちなみにイチモンジョチョウの翅表は、過去の投稿で確認していただきたい。

アサマイチモンジという名から、群馬県の浅間山周辺もしくは山地にしかいない蝶と思い込んでしまっていたが、どうも近隣では、アサマイチモンジとイチモンジチョウは、同所に混棲しているみたいである。

このアサマイチモンジの生息分布の方は、国内は、一般的に、本州のみと言われている。海外は、ニュージーランドやロシア沿海州南部辺りからの報告があるが、一応、日本固有種と考えられている種である。

一方のイチモンジチョウLimenitis camilla (Linnaeus, 1764)の生息分布は、国内は、北海道から九州まで。海外の生息分布は、ヨーロッパ全土に多く見られ、極東アジアにもいるようである。要は、動物地理学による旧北区に繁栄した蝶である事が分かる。

幼虫の食草は、アサマイチモンジもイチモンジチョウも、両種ともスイカズラ科のスイカズラ(忍冬)との事である。そして、アサマイチモンジとイチモンジチョウが同じスイカズラの株に産卵することもあるらしい。明るい場所を好むアサマイチモンジは、日当たりの良い葉に、日陰を好むイチモンジチョウは、日陰の葉にと、好みが分かれるようである。

最後に、アサマイチモンジは、都道府県が独自に定めるレッドデータでは、東京都が絶滅種、神奈川県と千葉県が絶滅危惧種Ⅱ類、埼玉県と島根県が準絶滅危惧種に指定している。

イチモンジチョウ 幼虫 Limenitis camilla (Linnaeus, 1764)

最近、近隣で見かけて写真に撮っていた蝶の幼虫である。

直ぐに、タテハチョウの仲間の幼虫だろうと予測が付いたので、調べたところ、イチモンジチョウの幼虫と分かった。

この幼虫の食草は、スイカズラ科のスイカズラとの事だが、確かに、上の写真の齧られてる葉っぱが、スイカズラもしくはスイカズラの近縁種である。

違う角度からの写真をもう一枚。

さて、近隣でたまに出会うイチモンジチョウだが、生息分布は、国内は、北海道から九州まで。海外の生息分布は、これまた、ヨーロッパ(特に西ヨーロッパ)が原産と思えるような分布だが、次の大きな生息エリアが、極東の日本や朝鮮半島なのである。そのヨーロッパと極東の間には、現在ロシアのシベリア鉄道が通っているラインに沿って、生息地が点在している感じである。ユーラシア大陸の両端に生息エリアが生まれるのは、一体、どんなプロセスを経ての結果なのか、興味が湧いてしまう。ゆっくり、考えてみようと思う。

イチモンジチョウの成虫の投稿は、こちらから。

イチモンジチョウ 成虫 Limenitis camilla (Linnaeus, 1764) 2

最近、近隣で見かけて写真に撮っていた蝶である。

大きさは、開張で5センチぐらいであった。

種名は、イチモンジチョウ。2年前の8月26日にも投稿しているが、その時より少し良いと思える写真が撮れたので、再投稿してみた。

幼虫の食草は、スイカズラ科のスイカズラとの事であるが、上の写真でも写っている。蝶が止まっているのはクズであるが、その遠景にヤブガラシとスイカズラが写っている。

今回この蝶の写真を撮った付近では、毎年、時々、この手の大きな蝶を見かけていた。しかし、写真に収める事が出来ないでいたため、何蝶か分からないでいたが、イチモンジチョウだったものと推測する。

近隣の同じような環境では、コミスジや、ミスジチョウや、科は違うがダイミョウセセリなんかが似た雰囲気の黒っぽい蝶と思うが、それらと比べて、イチモンジチョウは大きめの気がした。(図鑑的には、ミスジチョウの方が大きいらしいが……。)

生息分布の方は、国内は主要4島に生息しているらしいが、近い海外では、朝鮮半島に、その北にあるロシア沿海州。そして、興味深いのは、ヨーロッパはほぼ全域に濃く生息している蝶のようである。しかし、北米大陸とかでは目撃情報がなく、また中央アジアも似たような感じである。極東アジアとヨーロッパ……どういう移動をした蝶なのであろうか、ミステリアスである。