シモフリシマハゼ Tridentiger bifasciatus (Steindachner, 1881)

最近、ハゼ(マハゼ)釣りにハマっている。8月までは、ウナギ釣りにハマっていたが、9月になり、ウナギが釣れなくなったので、取り敢えず、お手軽なイメージのハゼでも釣ってみるかといった感じである。お手軽と言っても、食味的には、マハゼは、自分的には高級魚のランクである。

この日は、関東最大の汽水湖である涸沼と海を繋ぐ涸沼川で竿を出してみた。お友達らから、「デカいハゼは、テトラの中を狙え!」と言われてたので、半信半疑やってみた。

さてさて、テトラの隙間は沢山あるが、いざ仕掛けを落としてみると、予想してたより全然浅い。おまけに、アタリも全然感じないので、置き竿でしばらく放置。

メインは、流れのある本流をサビいて、ほどほどにクロダイの幼魚からの魚信を楽しんでいた。

時々、全く竿先に変化の起きない置き竿を上げてみるのだが、この魚が掛かっていることが殆どだった。

平均サイズは、8センチぐらいであったであろうか。

なんだ、この縞のあるハゼは?……未だに、名前を知らない魚がいるもんだと思いながら、釣れ上がって来ても、サイズ的に全部リリースした。

あまり鮮明ではないが、写真には撮っていたので、帰宅後、種名を調べてみると、シモフリシマハゼと種名が判明した。とにかく、過去の印象に残っていない魚なのは確かである。

シモフリシマハゼの名前の由来は、眼の下の方から腹部にかけて見える散りばめられた小点が霜降りを意味し、写真でも見て取れる体側を走る横縞がシマを意味していると思われるのである。

生息分布の方は、国内は北海道から九州に至るまで。海外の生息分布は、ロシア沿海州、朝鮮半島、台湾、対する中国福建省や香港辺りから生息報告が上がっている。そして、興味深いのは、アメリカ西海岸の沿岸部。こちらは、大型船のバラストに混ざって移動してしまったんだと推測できる。

まだ食した事はないが、美味との事である。美味と表現されても、骨とか苦味のある場所を取り除いて食べるタイプの私には、好む味でないのは想像が付く。ただ、魚の腹わた等の苦味を最高の栄養として捉えるなら、食べやすい魚の予感もする。

いつか、食してみようと思う。

カダヤシ Gambusia affinis (Baird et Girard, 1853)

昨日、九十九里方面に魚釣りに出かけた際に、河口から1〜2キロの内陸部にある田んぼ脇の用水路で捕まえた。

釣り餌に使うザリガニを増量する目的で、細い用水路を除いたら、水は思いの外綺麗で色々な魚が泳いでいるのが見えた。これだけ泳いでいれば、網で掬えば結構入るであろうと、車から網を取り出して、バサッとやってみた。

ザリガニは獲れなかったが、予想より、多くの魚種が入ってきた。

その中に、以下の魚がいた。

大きさは、体長で4センチ以上はある。網には、エビ以外は、ギンブナ、タイリクバラタナゴ、モツゴなんかも入ったが、それらに引けを取らない大きさである。

おそらく、カダヤシなんだろうなと思ったが、ちょうどお腹に仔魚がいる時期も重なったのか、とにかく、カダヤシってこんなに大きかったんだとビックリしてしまった。(グッピーの雌ではないと思うし、グッピーは、いくら千葉県の太平洋岸でも冬は越せないのではと思う。)

自分はよく家の近所や近隣でガサガサをする方だが、過去にカダヤシを見たのは、10年以上前に、手賀沼の水路においてだった。昨年、佐原の水路で、一風変わったメダカを見つけて、近隣で普通に見かけるミナミノメダカと違うと感じ、キタノメダカかと勝手に思っていたが、もしかしたらこのカダヤシの可能性はないかと思い始めてもいる。(その時の写真撮っていたかなぁ〜)

さて、このカダヤシの原産地は、アメリカ合衆国のミシシッピ川流域との事でる。

日本への移入は、大正時代の1913年にアメリカ合衆国から、1916年には台湾から、蚊の幼虫のボウフラの駆除のために、行われている。日本各地に拡がったのは、1970年代の事であり、福島県以南までは冬を越せる可能性があり生息しているようである。

ただ、熱帯地方の風土病や、それ以外の地域でも謎の風土病は、蚊が媒介していることは多いので、当時は、まさにカダヤシ(蚊絶やし)様様で、救世主的に、各国へと移入されていったものと推測される。

しかし、現在では、ひとつ前に投稿したスクリミンゴガイと同じく、日本生態学会の選出する日本の侵略的外来種ワースト100に、国際自然保護連合の選出する世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれている。

そして、重点対策外来種止まりのスクリミンゴガイと違うのは、カダヤシは、外来生物法の特定外来生物に指定されている(生態系被害防止対策種では緊急対策外来種)事から、かなり扱いに制限がかかっており、違反行為への罰則がある点である。このカダヤシを生きたまま移動させて、自宅で観察するとかは、違反行為なのである。ただ、ブラックバスやブルーギルも、同じ扱いだが、未だに、野池や工業団地の貯水地に密放流しているだろうなという現場を見かける事があるぐらいだから、ほとんどの人には、外来生物法なんかは浸透していないのかもしれない。

ここで、話は、カダヤシに戻るが、カダヤシが、メダカを駆逐するかという点だが、現時点での私には分からない。ただ、カダヤシの側からの棲み分けは出来ると思われる。というのは、今回カダヤシがいた水路にはメダカは住めないと思う。水流を遮る植物なり、隠れる場所が少な過ぎる。カダヤシは、そんな場所でも生息出来ていた。まぁ、同所にメダカとカダヤシが棲むことになったら、卵生のメダカよりも、胎性のカダヤシの方が、幼魚の生存率は絶対高くなってしまう気はする。餌を取る能力は、どっちに軍配が上がるかは、現段階では予想は付かない。ちなみに、メダカは、現在ダツ目という目に分類されているが、カダヤシは、グッピーらと同じカダヤシ目に分類されるらしい。

それにしても、綺麗な水の浅めの水路に、無数の魚影。見てて飽きなかった。

マナマズ Silurus asotus (Linnaeus, 1758)

先週末、家から車で40分ぐらいの場所で釣ってきた個体である。

大きさは、45センチぐらい。

ナマズと言えば、日本全国、何処にでもいそうな気がするが、沖縄にはいない魚だと分かった。

過去には、福岡県、埼玉県、今回は千葉県で釣った事になるが、これまでに10匹も釣り上げて来ていない気がする。家の近所の小川にも居ると思われるが、数が多くないのか、家の近所で釣ったり、採ったりした事はない。ただ、浅い淀みでクネクネとしなやか過ぎるシルエットを見ると、「あれは、鯉やアメリカナマズではなく、ナマズじゃないかな。」と眺めていたりはする。

さて、今回は、どうしても、釣ったナマズの食味が再確認したかった事もあり、持ち帰って来た。再確認したかった理由は、家の近所の水系に溢れかえっているアメリカナマズが、どうしても美味しく食してあげられず、また、美味しいというまで仕上げる下処理に手間がかかるので、日本の在来のマナマズは、どうなのであろうかと自分自信で再確認したかったのである。

結論から言って、アメリカナマズと在来のマナマズは、別物だと分かった。

今回は、マナマズを食べるに当たって、出来るだけ素材の味が知りたかったので、皮も剥がずに、油で誤魔化すこともせず、蒸した後にタレを付けて焼いて、所謂、九州とかの蒲焼風にしてみた。

感想は、美味しいお魚に尽きる。ちょっと長い時間蒸した事で、生臭みも落ちたのか分からないが、魚それぞれが持つ独特の魚臭さは、ほぼ無い。身質は、ホロホロに柔らかくて、逆に、身割れが激しくて、皮と一緒じゃなかったら、バラバラに解れてしまうかもしれない。

蒸した事で、身の間に入り込んだ水分が滲み出てくるのか、蒲焼というよりは、ちょっとした煮物のような感じになったが、作り方が功を奏したのか、他に類を見ない美味しい魚の煮物が完成した。煮物が美味しい身近な魚として、金目鯛とかナメタガレイとかがあるが、マナマズの方が正直美味しいと思った。丁寧に精米した炊き立ての白米と一緒に食べたら、最高に幸せな気分になると思った。

もちろん、蒲焼という点では、鰻の本来持つ脂の美味さが、ナマズには欠けるが、雑味のない上品な味で柔らかく解れやすい身は、違う方向で美味しい蒲焼だと感じた。きっと、身に色が付くほど煮て煮物にすると、素材本来の旨味をボケさせてしまう可能性もあるので、今回は、偶然だけど、美味しいレシピを発見した感じである。

そんなに美味しいナマズだけど、全く食材として注目していないのが、一般的な日本人の現在の傾向である。身近な環境に美味しい魚を殖やすことの重要性に気が付き始めても良い時代である。食料の輸入事情(未来)が、今後、日本に有利に傾いていくとは、なんとなく思えない時代である。

ところで、このマナマズSilurus asotus (Linnaeus, 1758)は、沖縄含む南西諸島にはいないが、海外では、中国東部や台湾やベトナムの方まで生息しているらしい。日本には、他に固有種として進化したナマズが琵琶湖に2種、中部地方に一種いる。

そして、日本固有種含めて、このナマズのアジアの分布を眺めた時に、マナマズは、元々は、関西以西にしか生息しておらず、江戸時代以降に関東や東北に持ち込まれて来たという推測が、なんとなく真実を物語っている気がしてくる。

たまたま、マナマズの脂の乗った美味しい時期だったのかもしれないが、少し前に投稿したニゴイと共に川魚達も侮れないなと思った。