イラクサ Urtica thunbergiana (Siebold & Zucc.)

先週末に、小学生の娘と一緒に南房総を釣り旅行した時に見かけた。

魚釣りのことばかりが気にかかり、魚以外の生物にはほとんど意識が向かなかったが、小さな神社を参拝したときに、境内で見かけた植物である。

最初は、我家の庭にも生えて来るシソかと思い、手で手繰り寄せようとした時に、指の腹に予想外の痛みが走ったのである。

ここで、シソって、棘が生えていたかという疑問が生まれた。近隣で見かけるヤブマオや少し山地で見られるアカソに葉は似ているが、こんなに痛い棘はなかったよなとも思った。

すると、なんだ?となったのだが、同時に、イラクサって、コレじゃないかと結びついたのである。

そして、調べたところ、上の写真の植物は、イラクサだと判明した。

そして、この棘の根元には、液体が入っている嚢が有り、嚢には、ヒスタミンやアセチルコリンという物質が格納されており、棘の先が敵の身体に刺さった時に、注入される仕組みになっているのである。もしかすると、私が予想外の痛みを感じたのも、そうした物質の影響もあるのかもしれない。どちらの物質も蕁麻疹を引き起こす事が知られているが、アセチルコリンの方は、神経伝達物質として認知されており、アルツハイマー病に効果があると研究されているようである。

とにかく、このイラクサが、ここまで進化した理由が気になったが、単純に動物達の餌になりたくないとの視点からスタートしたんだろうなとの推測は出来る。どんな野生動物がイラクサから嫌がられたんだろうと思いを巡らせ始めた自分が居る。ちなみに、奈良の鹿が沢山いる辺りのイラクサは、近くの他の場所のイラクサよりも棘が攻撃的に進化しているとの記事を読んだことがある。

さて、このイラクサは、近隣の私の行動範囲で見かけた覚えがない事から、最後に、このイラクサの生息分布を眺めてみようと思う。国内の生息分布は、本州以南の比較的暖かい地域の植物のようである。海外は、中国の内陸部から多数の生息報告が上がっているようである。ただ、山地や寒い地域には、ミヤマイラクサという近縁種が生息しており、私の身の回りで見かけない理由には、かつては、ミヤマイラクサの生息域であったのではないかなとの憶測がしたくなる。

どちらにせよ、イラクサが、結構痛い厄介な植物である事は実地で学習出来たので、ちょっと我家の近くには進出をご遠慮願いたい植物かもしれない。

シラユキゲシ Eomecon chionantha Hance

この植物は、家からそう遠くない場所に自生していて、気になっていた植物である。

2年ちょっと、種名に辿り着けないでいたが、とうとう種名が判明した。何事も、諦めないで、気に掛けていると、道が拓けるみたいなことなのであろうか。

写真では分かりづらいと思うが、葉は意外と大きく径で20センチ近くある。

そして、一番の特徴は、4月の半ばに、白いハッキリとした花が咲くのである。以下に、2年前の花期に写した写真を。

これだけ特徴的な植物なのに、ネット上に殆ど情報が出回ってなかったのである。

今回は、気まぐれで、「波打ったフキ」と検索したところ、出て来た画像の中に、そっくりなものが含まれていた感じである。

種名は、シラユキゲシ(白雪ゲシ)。原産は、中国の南東部の標高の高い場所(1400〜1800メートル)のようである。

夏の乾燥を嫌い、湿った半日陰を好む耐寒性多年草との事だが、確かにこのシラユキゲシが群生していた場所は、杉・ヒノキ・サワラの人工林の林縁で斜面の下の方でもあり、湿った土壌といった条件は備わっている。

この植物は、庭園の半日陰の下草とかに利用されたり、鉢物で流通したりしてるらしいが、どうやって、この自然下の場所に溢出したのかは、興味が湧く。(ただ、一般的には、野への溢出を外来種として警戒されている植物のようである………ただ、これからの温暖化の傾向を考えると、平地では好条件は揃っていない気もするが……)

私は、昭和の日本の庭とかに合いそうななかなか趣きある植物だと思う。

ヤマブキショウマ Aruncus dioicus (Walter) Fernald var. kamtschaticus (Maxim.)  H.Hara 福島県 標高 800メートル

先週末に、家族が山登りにお友達と行くというので、私は、一行を登山口で下ろし、下山口で拾うという完全な運転手の役を買って出た。

買って出た理由の一つは、登山口も下山口も標高は1000メートルぐらいあり、待ってる間の5時間(結局は7時間)は、自由に自然観察やイワナ釣りが楽しめるからである。登山一行もスタート地点に戻ってこないコースが取れる事を喜んでくれる。お互いの利害が一致した。

想像以上に豊かな生態系であったが、先ずは気になった植物を種名に辿り着ける限り、紹介してゆこうと思う。

この植物は、知っていた。ヤマブキのような葉っぱしてるし、ヤマブキショウマと言うんじゃないかとの予想はしていたが、実際にヤマブキショウマである。

どうも、雌雄異株のようで、上の写真のような細い花序は雄株で、雌株は、もうちょっとふっくらとした花序になるようである。

若芽は、山菜としても食べれるようである。

この植物の分布に関しては、日本には、もちろん分布しているのだが、ロシア極東部のかなり北方にも、生えていたり、ヨーロッパにもほぼ同種がが生息しているようである。

寒冷地域の植物であり、涼しいところが好きな植物と理解した。