キヅタ

この常緑の蔦植物を初めて身近に意識したのは、近所の親族の家の裏庭であった。裏庭の掃除をしてあげていた時に、杏の木にがっしりとへばり付きながら登るかなり厄介な植物との印象を持ったのがスタートだと思う。そんなに遠い昔の事ではなく、12、3年前の事かと思う。

当時は、この常緑の蔦植物が、園芸で植えたものが逸出したのか、自然なものなのか分からなかった。ただ、ここ最近、近所の林縁を眺めている時に、広範囲に渡って所々で目にするに至って、古来より自然に生えている植物なんだろうとの結論に至った。

つい最近も、近所の針葉樹にへばり付くキヅタ(フユヅタ)を目にし、写真に収めていたので、その写真を以下にアップしてみる。

1枚目は、葉が幾つかに分かれている写真である。続いて、葉が幾つかに分かれずに、菱形のものの写真を以下にアップしてみる。

2枚目のものは、熟し始めた黒紫の実も見てとれる。キヅタの花期は、10月〜12月との事である。

私は、このキヅタの写真を撮りながら、葉の形に変異がある事に気が付き、この違いに興味を抱いたのだが、ネット上で、簡単にその違いを説明している文章を見つける事が出来た。どうも、若い幼い茎から分岐した葉は分裂するようで、老齢した旧い枝から出た葉は分裂せずに菱形のような形になるとの事である。また、そうした菱形の葉が付く蔦茎に花が咲き実ができるようである。

キヅタの名の由来は、冬に葉を落とす蔦植物のような草っぽい細い蔦ではなく木のような太い蔦を育むまで成長出来るところから、木蔦(キヅタ)となったらしい。以下に、その太い蔦が写っている写真を載せてみる事にする。

何本もの蔦が上へと昇っているが、真ん中右寄りに昇る無数の針のような気根が目立つ太い枝も老齢キヅタの蔦というか幹である。そして、ここで注目して欲しいのは、蔦が木の周りを回転しながら昇るのではなく、比較的真っ直ぐと昇っている事である。この特性のために、キヅタは、同じように身近に見かけるノフジやアケビ(ミツバアケビ)と異なり、巻き付く木を締め付け殺してしまうことも無いようである。実際のところ、木が巻き付かれた圧力で死ぬとは思えないが……潰され変形しながら生き抜きそうな気はするが。

また上の写真から見てとれる無数の針のような気根は、木にへばり付くためだけのものであり、親木の栄養を吸収したりはしていないとの事である。

さてさて、このキヅタが木に登る性質を持っているのは、光合成を効率よくする為と言われている。確かに、陽陰どんな環境でも育つと言われるキヅタが開けた明るい場所で見かけない気がするのは、自然環境下では他の少し背の高い草に埋もれて光合成があまり出来なくなるからではないかと想像できる。ゆえに、上の写真のような針葉樹林の林縁や、冬に葉を落とす紅葉樹の林内に、それらの木と共存しながら生きている気がする。ゆえに、私の中では、キヅタは、少し暗い日陰に生えてる蔦植物のイメージがある。

また、古来より、このキヅタが、ずっと生息して来ているなら、辺りの木は全てキヅタに占拠されてそうな気もするが、そうはなっていない。この辺のバランスを管理しているのが、何に依るものなのか、とても興味が湧く。

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