オオカブラヤガ 成虫 Agrotis tokionis (Butler, 1881)

昨晩、我家の外灯下に来ていた蛾の一つである。

大きさは、前翅長で20ミリをちょっと超えるぐらいあったと思う。大きい蛾だなとの印象を持った。

これだけハッキリと腎状紋、環状紋、楔状紋が見れると、思い浮かぶのは、ヤガ科モンヤガ亜科のカブラヤガだが、普通種のカブラヤガではつまんないし、カブラヤガにしては大きい感じがするし、もう少し調べていると、秋の10月に現れる蛾で、オオカブラヤガという種がいる事を知った。そもそも、まぁまぁ立派な櫛髭状の触角も気になり、櫛髭状の触角を持つのは大概は雄だから、一般的に雄より大きい雌は、結構大きなサイズになる蛾だぞとの切り口もあった。

こうなって来ると、大きさと10月半ばという今の時期を考慮すると、上の写真の個体は、オオカブラヤガであろうとの結論に至った。

幼虫の食草は、アブラナ科のハクサイとネギ科のネギが確認されているようだが、実際は、もっと多岐に渡って食せるのだと考える。

生息分布は、国内は、北海道から九州近海の島嶼まで。海外の生息分布の方は、朝鮮半島、中国東北部、ロシア沿海州やサハリン、ロシアのアムールの方まで生息している模様。

このオオカブラヤガが属するAgrotis属8種は、タマナヤガとカブラヤガを除いては、寒い地方に生息の偏りがある気がした。ここに来て、もしかして、ヤガ科の亜科や属を眺める時に、気候帯とリンクしているケースもないかとの気付きが生まれることになった。

トビモンアツバ 成虫 Hypena indicatalis Walker, 1859

最近、近隣で見かけて、写真に撮っていた蛾である。

大きさは、前翅長13ミリぐらい。

トビモンアツバという種だと思う。オオトビモンアツバという種もいるが、上の写真の個体は、トビモンアツバの方だと思う。

6月ぐらいから見かけれる蛾のようだが、10月の今の時期にいる個体は、越冬して来年の3月にも目撃されることになるのかとも思われる。

個体変異の多い蛾との事だが、秋型の上の写真のような色合いの個体達は、過去にはモンクロアツバという名で別種扱いされていたとのことである。

幼虫の食草は、イラクサ科のカラムシとのことである。カラムシが食べれるなら、同所に生えるヤブマオなんかも食べれるのではと思えてしまう。

生息分布の方は、国内は、関東地方以西……九州近海を経て、沖縄本島含む南西諸島まで。海外の生息分布の方は、韓国、台湾、中国南東部で確認されている。所謂、暖かい地域の蛾であることが分かる。ただ、暖かい地域の蛾も、北関東の冬の寒さに負けずに、成虫のステージで越冬できるんだと、感心してしまっている自分がいる。

ハマオモトヨトウ 成虫 Brithys crini crini (Fabricius, 1775)

本日、我家の庭で、樹木に止まっている蛾を発見。薄めの色の幹肌に、黒っぽい体色は、とても目立っていた。

大きさは、前翅長20ミリぐらい。

調べたところ、ハマオモトヨトウという種ではないかなと思った。

ハマオモトヨトウという蛾は、何処でも誰でも見れる訳ではないのか、私が蛾の情報を参照する他の方々のサイトでも、紹介されていないケースが多いと感じた。

名前に、ハマオモトと付くが、漢字で書くと、浜万年青。所謂、ハマユウ(浜木綿)のことである。この温暖な海岸地域に自生するヒガンバナ科の植物を好むことから、ハマオモトヨトウの名が付けられたものと思われるが、この蛾の幼虫は、ハマオモトだけでなく、ヒガンバナ科の植物ならある程度何でも食べれるようである。

この蛾の生息範囲だが、学名の登録年が古いことから、ヨーロッパを中心として、世界各地に広がっていそうな予感がして調べたところ、確かに世界の広範囲に拡がってはいたが、少し興味深い拡がりのようにも見て取れた。先ずは、ヨーロッパに関しては、地中海沿岸の南部に集中しており、アフリカ大陸は最南端の南アフリカの辺りやマダガスカル諸島に集中しており、オーストラリアの東岸の沿岸部にも拡がりが見えた。これだけだと、人間の人為的移動と共に近年拡がって行ったとも推測したくなるが、オーストラリアの北岸やインド南部や台湾や中国南東部沿岸部を経て日本の西部に達している。この辺の拡がりは、大きく潮流の影響で、ホストであるハマユウ等の拡がりと同調しているようにも感じたくなる。

ちなみに、ハマユウCrinum asiaticumの世界分布とハマオモトヨトウの分布域は、かなり被っているのは確認したが、植物のハマユウの方は、南太平洋の島々や、中央アメリカの国々にも拡がっているが、ハマオモトヨトウという蛾の方は、まだ、そちら方面には、拡がっていないようである。

いずれにせよ、ハマオモトもハマオモトヨトウも、温暖な気候を好む生物のようなので、今回の投稿の主役であるハマオモトヨトウも、昨今の温暖化の影響で、少しづつ北上中の蛾なのかもしれない。

一応、各都道府県が独自に定めるレッドデータでは、神奈川が絶滅危惧種に、兵庫県が注目種(情報不足)に指定している蛾である。