エゾゼミ 福島県 標高800メートル

最近、気が付いた事だが、昆虫の分布状況を把握する際に、地図を上から眺めながら横方向の繋がりを模索するよりも、どの標高(気温帯)をメインに棲息しているかを掴んだ方が、昆虫の食草や種の進化の過程に繋がる情報を絞りやすいという事が分かって来た。

という事で、私が暮らす標高5〜25メートルぐらいのエリアの生物相の特徴を掴むためには、標高800メートルの辺り(気温が重要)のエリアとでも、違いがあるのか否かの比較は、少なからず色々なヒントをもたらしてくれる気がする。

では、このセミは、どうなのであろう。

大きさは、アブラゼミと同サイズぐらいだった。偶然に遊歩道に亡骸が落ちていたので写真に撮れたが、わざわざ捕虫網で捕まえてまでは写真に撮らなかったと思うので、今回はラッキーだったかもしれない。

最初は、クマゼミとも思ったが、クマゼミは、もっと緑の色彩も入っていたよなと思い、ちゃんと調べた所、エゾゼミという種だと分かった。

エゾゼミ(蝦夷蝉)というだけあって、低い気温を好むセミで、低地の平地には生息していない。そして、このエゾゼミよりさらに低い気温帯を好むセミにコエゾゼミというのが居る。コエゾゼミは、種名にコ(小)が付くぐらいで、エゾゼミよりはサイズ的に小さいのだが、外見的には両者は、結構似ていると、私は個人的に思う。

そして、私が混乱するのは、コエゾゼミは北方系の種で、エゾゼミは、南方系の種という事である。遠い太古に、大陸で、このエゾゼミ類の元祖が誕生した時に、超氷期にシベリア経由で来たのがコエゾゼミで、それより後の氷期に朝鮮半島経由で来たのがエゾゼミとでも考えれば良いのであろうか。どうなんだろう。

まぁ、とにかく、私が暮らす低地の平地には増えていけない種なのは、間違いなさそうである。ただ、遠く2万年前以上とかには生息していた可能性はある。

因みに、最近、気が付いた事だが、昆虫でエゾと種名の冒頭に付く昆虫達は、冷涼な気候帯で繁栄している種の気がする。近年の温暖化で少しづつ生息域が狭められて行っている昆虫達でもあるのかなと思う。

エゾカギバ 成虫 標高1200メートル 福島県

この蛾は、近隣近所で見た蛾ではないが、敢えて、近隣近所の身近な蛾達の比較の意味合いも込めて投稿してみようと思う。

大きさは、前翅長15ミリぐらいだった。随分、標高の高い所にも見覚えのある蛾がいるもんだと思い、一応、写真に撮っていた。

見覚えのある蛾というのは、ヤマトカギバの事であり、近隣の雑木林の林縁で、まぁまぁ見かける蛾である。ただ、そう考えると、殆ど標高のない我家の近くから標高1200メートル辺りまでと、生息域に幅があり過ぎる気もするというのが正直なところであった。

という事で、もう一度調べると、殆どそっくりな外見で、エゾカギバという山地性の蛾がいる事を突き止めた。

2種の違いは、翅を裏から見た時に前縁に紋様があるか否かと、エゾカギバの方が全体の翅色が暗めというぐらいである。あとは、前翅の内横線と外横線の間が無紋かへの字状の実線になるという点である。(ヤマトカギバは、この場所に二つの分かれた点が現れるようである。)

この事実を基に、上の写真を見返すと、確かに私が知るヤマトカギバよりは、暗い色をしている気がするし、への字状の実線がある。

エゾカギバなのかなと思いたい。

さて、エゾカギバの幼虫の食草は、ブナ科のブナ、ミズナラ、カバノキ科のダケカンバ等との事である。

ちなみに、学名は、Nordstromia griseariaであり、極東ロシアや中国にも生息しているとの事である。一方、ヤマトカギバの学名は、Nordstromia japonica であり、日本と対馬、中国に棲息しているようである。やはり、2種とも誕生は中国と考えるべきであろうか。

ニッコウアオケンモン 成虫 福島県 標高1200メートル

この蛾は、近隣近所で見た蛾ではないが、敢えて、近隣近所(標高5〜25メートル)の身近な蛾達の比較の意味合いも込めて投稿してみようと思う。

最初に、この蛾が目に入った時に、その大きさ(前翅長2センチ弱)と色合いからイラガの仲間(例えば、クロシタアオイラガヒロヘリアオイラガ)に似ているなと感じた。

こんな高山にも、イラガの仲間がいるのかなと思いながら調べたところ、ヤガ科ケンモンヤガ亜科のニッコウアオケンモンという種と分かった。

幼虫の食草は、シソ科のニガクサやクロバナヒキオコシらしい。どちらの植物も、現在の私は知らない。

さて、このニッコウアオケンモンも、山地性の蛾というだけであって、氷河時代の陸続きの土地が多かった時代には、一世を風靡していた予感がする。それを証明するかの如くに、ロシアの極東、台湾、もしかしたらヒマラヤ・チベットにも生息している蛾である。

あんまり出会えない人気種みたいである。

類似種にスギタニアオケンモンという種がいるが、こちらは普通種であり、2種がどういう進化の過程を経て枝分かれしたのか、興味が湧く。