モクズガニ Eriocheir japonica (De Haan, 1835)

タイムリーではないのだが、本年の夏に利根川の河口から35キロメートルぐらい遡上した辺りに、ウナギ釣りに出かけた際に捕まえて写真に撮っていたカニである。

ウナギの餌にする小魚やエビを現地で捕まえていた際に、網に入ってきた。

大きさは、殻の横幅で6センチぐらいだったと思う。

雰囲気や色合いから、モクズガニだと、現場でも思ったが、そして、一番モクズ(藻屑)を表してくれている大きなハサミの部分も無いが、調べたところ、やはりモクズガニのようである。

ハサミは、捕食者たちとの格闘の際に、取れてしまったものと思われる。この状態で、どうやって餌となるものを口に運べるのか不安に感じるが、どうやら脱皮の毎に、再生出来るらしい。こう考えると、捕食者達に、ハサミを差し出し、本体は生き残るという戦略を遺伝子的に備えているようにも感じて来る。

ちなみに、モクズガニの生息分布は、国内は、北海道から南西諸島までいるようである。小笠原諸島には、オガサワラモクズガニという別種が生息しており、モクズガニは、海外は、樺太からロシア沿海州、朝鮮半島の東岸にも生息しているようである。そして、興味深いのは台湾や香港にもいるとの事である。一方、朝鮮半島の西岸と中国大陸の東岸の大部分には、チュウゴクモクズガニという別種がいるのである。

さて、このモクズガニは、子供の頃からお馴染みの蟹であり、大抵の河川の河口から汽水域には棲息していると思う。そして、海から山までの距離が近い地域では、随分と川を遡上した清流域でも見かけていた。ただ、基本的に水中生活の蟹であり、陸上で見た記憶は、パッとは出て来ない。

そんなモクズガニが、10年ぐらい前に、利根川の河口から90キロぐらい登った辺りの農産物直売所に活きたまま売られているのを見たことがある。これを見た時に、そこに作物を卸している農家が、そんなに遠くまでモクズガニを採りに行ってるとは思えなくて、利根川をどれぐらい遡上して来ているのか気になったことがあった。ただ、その近辺の支流をガサガサしても、モクズガニが網に入って来ることはないのである。

そして、今回、利根川のかの河口堰があっても、香取市(旧佐原)ぐらいまでは普通に遡上して来ていることが分かったのである。

また、このモクズガニは、蟹好きの間では、とても美味なる蟹として知られている。蟹味噌なるものの食べ方に馴染みのない私には、これまで、食材としては無縁の蟹であったが、海から少し昇った辺りの河川では、簡単によく目に出来る蟹である。今度、捕まえて、味わってみようかとも思案中である。

ドヨウオニグモ Neoscona adianta (Walckenaer, 1802)

最近、近隣で見かけて、写真に撮っていたクモである。

草原の中にポツンと建つコンクリートの建造物に巣を張っている蜘蛛が見えたので、近付いてみた。近付くまでは、薄い緑色の色合いが見えていたので、どうせジョロウグモか、コガネグモの仲間かと思っていた。

ただ、近くでマジマジと見ると、オニグモの一種だと気が付いた。

大きさは、体長9ミリぐらいあった。

調べる過程で、最初に似ていると思ったのは、ゴマジロオニグモという種だったが、ゴマジロオニグモの平均サイズが5-6ミリということで、どうしても合わないと思った。

そして、他に似ているオニグモはいないものかと調べたところ、ドヨウオニグモが浮上して来た。

そう。上の写真の個体は、ドヨウオニグモなのだが、オニグモとしては聞き慣れた名前だったので、てっきり過去に投稿済みと思っていたが、確認したら、未投稿の種と分かった。

ドヨウオニグモ。上の写真の個体は、雌であり、蜘蛛全般に言えることだが、雄は一回り小さく、頭部がもっと全然大きい。

年に2回発生のサイクルのある蜘蛛とのことである。

生息分布の方は、国内は、北海道から九州まで。伊豆諸島にもいるようである。海外の生息分布は、ヨーロッパでは、ごく普通種のようで、動物地理学の旧北区には、極東アジアの方まで拡がっているようである。ただ、旧北区でも、あまり緯度の高い地帯には、生息していないようである。

キバネハサミムシ Forficula mikado (Burr, 1904)群馬県 万座温泉 標高1750メートル

先週末、群馬県の万座温泉に出かけた際に、見かけたハサミムシである。

大きさは、体長17ミリぐらいだった。

翅が見てとれて、平地の近隣でたまに見かけるハサミムシは、オオハサミムシだが、オオハサミムシのハサミの部分は、身体に占める割合が全然大きい。キバネハサミムシのハサミに関しては、長短様々と書かれている方もいた。あと、頸の辺りも細っそりしている気がする。

この辺の特徴から、高地に生息してそうなハサミムシを調べたところ、キバネハサミムシという種の存在を知ることになった。

ネット上のキバネハサミムシの画像では、もっと上翅の部分の色が黄色がかった個体も多いが、上の写真の個体は、キバネハサミムシだと思われる。

キバネハサミムシの生息分布の方は、国内は、北海道と本州のおそらく標高の高めの場所のようである。北海道のように緯度が上がり、気温が低くなれば、生息場所も低くなっている可能性は感じる。海外の生息分布に関しては、ちょっと情報を見つけられなかったので、日本国内にしかいない可能性はなくはないとも思う。