シロヒトリ 雌雄 触角の違い Chionarctia nivea
(Ménétriès, 1859)

8月の暮れより、近隣の自然下では、シロヒトリとの遭遇が容易いはずだが、この沢山いるシロヒトリを眺めながら、今年は、自分にしては珍しく好機を逃す事なく、一つの実験(調査?)を試みれたと思う。

そうだ……沢山出会えるシロヒトリ達を見比べて、雄と雌の違いを見出し、確証してみようと……。

そして、運の良い事に、モデルは沢山いるだけでなく、おとなしく近づいても逃げない。おまけに、手で摘んでも、擬死の習性で、しばらくの間は動かず、観察はし放題になる。

そして、もう一つ運の良いことに、この日は、産卵直後と思われる個体が、産みつけた卵に覆いかぶさるようにいた。普通に考えると、その個体がメスだと思うので、その個体はどんな特徴があったかは以下の写真で説明してみる。

触角が糸棒状に見える。厳密には、糸棒状というよりは、片側に微妙な櫛歯(鋸歯)があるのが分かる写真を以下に。

以上が、メスの触角の特徴であるが、蛾の一般的な傾向である雌の方が大きいというのは、この蛾にも当てはまり、雄が前翅長30ミリぐらいといったら、雌が35ミリぐらいではないだろうか。

続いて、雄の触角の特徴が見て取れる写真を以下に。

少しアップしたものを以下に。

確実に両歯状になっているのが分かり、しかも片側の櫛歯は長めである。

以上が、シロヒトリの雄と雌の違いである。

近隣でヒトリガの仲間は擬死の習性を持つものも多いが、ちなみに、擬死すると、どういうメリットがあるのかを確信するような現場には出会したことがない。

キハラゴマダラヒトリ? 成虫 3化目? Spilosoma lubricipedum sangaicum (Walker, [1865])

最近、近隣で見かけて、写真に撮っていた。

大きさは、全翅長2センチちょっとといったところであろうか。

先ず、この蛾を見た時に、「キハラゴマダラヒトリの3化目に出会えたのか?」という感覚が一番最初に来た。

それならば、確実に写真を撮り、捕まえて、腹部の色や脚の色を確かめてみようと思った。そして実行に移したのだが、予定外に逃げ去った。本来、この白ベースのこのサイズのヒトリガの仲間達は、擬死する習性があり、大人しく死んだふりをしてくれるケースが殆どであり、余裕を持って腹部の観察が出来るのだが、今回は、死んだふりはしてくれない個体だったみたいである。

かろうじて、指で摘み損ねている時に、見える腹部は、黄土色に見えた。山吹色の鮮やかさは感じられなかった。ただ、一瞬でも赤っぽい雰囲気は感じられず、やはりキハラゴマダラヒトリなのかなと思った。

では、今年3羽化目と考えられるキハラゴマダラヒトリが、1化目、2化目と異なる特徴はないかと、写真を眺めていると、幾つかの気付きがあった。

一つは、キハラゴマダラヒトリにしては、バランス的に前翅長が長い気がした。

一つは、触角が黒いキハラゴマダラヒトリが多いが、本種は、白っぽい。もちろん、最初は黒で、時間の経過で、むらなく色が落ちるということも、無いとは言えないであろう。(この疑問点に関しては、来年、キハラゴマダラヒトリを見つけたら、黒い触角を筆かなにかで優しく擦ってみて、どれぐらいの擦りで色が落ちるのか、実験してみたく思っている……来年、実験台になってくれる個体には、大変恐縮だが……。)

あとひとつは、細かい事だが、触角の芯の両側が櫛状に見える。1化、2化の個体達は、片側だけ櫛状に見える個体か、よく見ると、先端の方半分が両櫛歯(鋸歯?)に見える個体が殆どだと思う。上の写真の個体は、比較的ハッキリと両櫛状が見て取れて、先端というよりは根本の方に、櫛歯が見えるという、1化、2化とは違う特徴が見て取れる。

うーん……一筋縄では行かないぞ、キハラゴマダラヒトリといった感じである。

ここで、気になったのは……春先に沢山見れたキハラゴマダラヒトリ(1化目)に始まり、数はぐんと少なくなったが、一化目から1ヶ月半後ぐらいの2化目の個体群の少し長い期間の遭遇……そして、運良く目に出来た今回の3化目と思われるキハラゴマダラヒトリの発見。この、3化目のキハラゴマダラヒトリ群が、産んだ卵から孵ったものが、あの一化目の沢山目に出来るキハラゴマダラヒトリ1化目になるのであろうかという事である。

1化目、2化目3化目となる度に、目撃出来る数が減る理由も知りたいが、キハラゴマダラヒトリのライフサイクルは、全ての個体が、1化→2化→3化と規則性を持っているのであろうかという疑惑が少し頭を過っている自分がいる。この疑惑は、さておき、蛾達が、一化目に続く羽化で、紋様や色合いが変わる遺伝の仕組みが、どうして?と思ってしまい、不思議でたまらないと感じている自分がいる。

そして、もし1化目、2化目、3化目と順序を追う度に目撃数が減らないとしたら、春先には、キハラゴマダラヒトリの大量発生となると思えるが……他には、3化目の個体群の孵化後の生存率が高い可能性があるのであろうか?……なんとか、自分なりに突き止めたいものである。

うーん……見てて飽きないキハラゴマダラヒトリ達。来年も宜しくお願いします!

2022年初シロヒトリ Chionarctia nivea (Ménétriès, 1859)

先週の火曜日に、今年初めてのシロヒトリに出会えた。

シロヒトリと言えば、私にとっては、晩夏の夜の外灯周りを飛び回る夏の風物詩的蛾なのである。“飛んで火に入る夏の虫“の諺の中の虫も、私的には、このシロヒトリのことなのではと思ってしまっている。

大きさは、体長で4センチ弱ぐらいだったと思う。

上の写真の個体は、触角の芯棒の両方に髭が見えているので、雄かと思われる。雌の触角は、芯棒の片側だけに櫛髭がある鋸歯状じゃなかったかとうる覚えしている。

ところで、このシロヒトリは、ヒトリガ科の似たような白をベースにした近隣で出会える近似種達と比べると、明らかに、異なる習性を持っている。

それは、出現時期である。近隣では、春先のキハラゴマダラヒトリに始まり、数は少ないが、オビヒトリが出現し、スジモンヒトリなんかも現れ、そうこうしていると、キハラゴマダラヒトリの2回目の出現が来るのである。おそらく、オビヒトリもスジモンヒトリも2回目の出現をしていると思われるが、それ以降は圧倒的に目撃出来る回数が減り、しっかりしたデータが記憶に残らないのが現実である。

そんな白いヒトリガの仲間達を見かけなくなって1ヶ月以上が過ぎ去った頃の8月の半ばに満を持して現れてくるのが、このシロヒトリなのである。そして、シロヒトリは、年にこの一回だけの羽化のサイクルしか持っていない気がする。

さて、このシロヒトリの分布は、国内は、北海道、本州、四国、九州(近海の島嶼含む)であり、海外は、朝鮮半島、ロシア沿海州、朝鮮寄りの中国なんかにも生息している模様である。ちなみに、キハラゴマダラヒトリなんかは、遠くヨーロッパなんかでも繁栄している蛾だった記憶がある。

最後に、シロヒトリの腹部や脚部や翅裏の雰囲気が見て取れる写真を貼っておく。

上の写真の個体の触角は、触角の芯の片側にだけ櫛歯が見えていて、雌と思いたいが、断言するには、もうちょっと観察データを集めたく思う。(今からの時期、幾らでも出会える蛾でもあるし……。)