ネズミモチ Ligustrum japonicum Thunb

近隣で、この植物は見かけることは出来るが、少し生息場所に規則性のありそうな植物(低木)である。

名前は、ネズミモチ。

名前の由来は、熟した実が鼠の糞に似ており、木全体の雰囲気が、モチノキに似ているところから来ているらしい。確かに紫色に熟した実は、鼠の糞に似ているとは私も思う。

さて、冒頭で、このネズミモチの生えている場所には傾向があると言ったが、どんな傾向があるかと言うと、近隣のどの場所も人為的に植えられていると考えられる場所に多い。例えば、企業の敷地内やゴルフコースの外周やら……。

元々、このネズミモチは、暖かい地方の植物であり、関東以西に自生する常緑低木なのであるが、もし、何十万年も前から近隣に存在していたら、もっと無秩序にあちこちの林の林縁とかに進出している気はしてしまう。決して、自然下の何処にでも生えている樹木ではない。逆に、敢えて植栽しましたよねといった感じのネズミモチには、頻繁に出会える気がする。

学名に、japonicum と付いている(英名は、Japanese privet)が、本来の生息地は、関東地方以西……琉球と言われる南西諸島までである。海外は、台湾や中国の一部には生えているとのことである。ただ、世界中の人口密集地には、あらゆる場所から生息報告が上がっているとも言える。近世の植栽から拡がっていると思われる。

ちなみに、大陸には、トウネズミモチという近縁種が存在して、日本にも明治時代の初期に渡来して、このトウネズミも近隣では普通に見られるのが現状である。(最近は、生態系等に関わる被害の防止等に関する法律で、重点対策外来種に指定されて、少しづつ人々の意識が向き始めて来ている植物かもしれない。)

ところで、今回、ネズミモチのことを調べて初めて知った事実に、ネズミモチもトウネズミも、薬用植物としては、かなり有益な植物であり、漢方の世界では女貞子と呼ばれているようである。滋養強壮や若白髪や月経不順、視力低下に霞眼等に効能があるようである。ちょっと果実種でも作ってみようかなとも思わせてくれる植物である。

最後に、ネズミモチとトウネズミの見分け方だが、ネズミモチの実の方が、紡錘形で長くって、トウネズミモチの実の方が少し大きく丸型である。(ただ、ネズミモチの実のように紡錘形のものも存在するが、大きさは明らかにトウネズミモチの実の方が大きいように見える。)葉も、トウネズミモチの葉の方が大きく、手っ取り早い見分け方としては、空にかざして葉の葉脈を見てみる方法がある。ネズミモチの葉脈はほとんど見えないのだが、トウネズミモチの葉脈はハッキリ過ぎるぐらい見えるのである。

ネズミモチの葉の葉脈
トウネズミモチの葉の葉脈

イラクサ Urtica thunbergiana (Siebold & Zucc.)

先週末に、小学生の娘と一緒に南房総を釣り旅行した時に見かけた。

魚釣りのことばかりが気にかかり、魚以外の生物にはほとんど意識が向かなかったが、小さな神社を参拝したときに、境内で見かけた植物である。

最初は、我家の庭にも生えて来るシソかと思い、手で手繰り寄せようとした時に、指の腹に予想外の痛みが走ったのである。

ここで、シソって、棘が生えていたかという疑問が生まれた。近隣で見かけるヤブマオや少し山地で見られるアカソに葉は似ているが、こんなに痛い棘はなかったよなとも思った。

すると、なんだ?となったのだが、同時に、イラクサって、コレじゃないかと結びついたのである。

そして、調べたところ、上の写真の植物は、イラクサだと判明した。

そして、この棘の根元には、液体が入っている嚢が有り、嚢には、ヒスタミンやアセチルコリンという物質が格納されており、棘の先が敵の身体に刺さった時に、注入される仕組みになっているのである。もしかすると、私が予想外の痛みを感じたのも、そうした物質の影響もあるのかもしれない。どちらの物質も蕁麻疹を引き起こす事が知られているが、アセチルコリンの方は、神経伝達物質として認知されており、アルツハイマー病に効果があると研究されているようである。

とにかく、このイラクサが、ここまで進化した理由が気になったが、単純に動物達の餌になりたくないとの視点からスタートしたんだろうなとの推測は出来る。どんな野生動物がイラクサから嫌がられたんだろうと思いを巡らせ始めた自分が居る。ちなみに、奈良の鹿が沢山いる辺りのイラクサは、近くの他の場所のイラクサよりも棘が攻撃的に進化しているとの記事を読んだことがある。

さて、このイラクサは、近隣の私の行動範囲で見かけた覚えがない事から、最後に、このイラクサの生息分布を眺めてみようと思う。国内の生息分布は、本州以南の比較的暖かい地域の植物のようである。海外は、中国の内陸部から多数の生息報告が上がっているようである。ただ、山地や寒い地域には、ミヤマイラクサという近縁種が生息しており、私の身の回りで見かけない理由には、かつては、ミヤマイラクサの生息域であったのではないかなとの憶測がしたくなる。

どちらにせよ、イラクサが、結構痛い厄介な植物である事は実地で学習出来たので、ちょっと我家の近くには進出をご遠慮願いたい植物かもしれない。

シラユキゲシ Eomecon chionantha Hance

この植物は、家からそう遠くない場所に自生していて、気になっていた植物である。

2年ちょっと、種名に辿り着けないでいたが、とうとう種名が判明した。何事も、諦めないで、気に掛けていると、道が拓けるみたいなことなのであろうか。

写真では分かりづらいと思うが、葉は意外と大きく径で20センチ近くある。

そして、一番の特徴は、4月の半ばに、白いハッキリとした花が咲くのである。以下に、2年前の花期に写した写真を。

これだけ特徴的な植物なのに、ネット上に殆ど情報が出回ってなかったのである。

今回は、気まぐれで、「波打ったフキ」と検索したところ、出て来た画像の中に、そっくりなものが含まれていた感じである。

種名は、シラユキゲシ(白雪ゲシ)。原産は、中国の南東部の標高の高い場所(1400〜1800メートル)のようである。

夏の乾燥を嫌い、湿った半日陰を好む耐寒性多年草との事だが、確かにこのシラユキゲシが群生していた場所は、杉・ヒノキ・サワラの人工林の林縁で斜面の下の方でもあり、湿った土壌といった条件は備わっている。

この植物は、庭園の半日陰の下草とかに利用されたり、鉢物で流通したりしてるらしいが、どうやって、この自然下の場所に溢出したのかは、興味が湧く。(ただ、一般的には、野への溢出を外来種として警戒されている植物のようである………ただ、これからの温暖化の傾向を考えると、平地では好条件は揃っていない気もするが……)

私は、昭和の日本の庭とかに合いそうななかなか趣きある植物だと思う。