トノサマガエル Rana nigromaculata (Hallowell, 1861 “1860”.)

最近、利根川を渡り、対岸の香取市にウナギ釣りに出かけた時に、近くに寄ってきた蛙である。

大きさは、体長3センチぐらいであった。

先ずは、近隣でこの手のカエルを見かけたら、元々居たであろうトウキョウダルマガエルか、後から入ってきたと思われるトノサマガエルかのどっちだろうとの比較検証が必要である。

そして、このカエルは、どっちであろうとの検証をすると、後ろ足の長い指が鼓膜の端まで届いていることから、トノサマガエルだと判断出来る。(ちなみに、このトノサマガエルだったという結果は、私にとっては意外で、もしかしたら、家の近所で見かけて、トウキョウダルマガエルとして投稿しているものは、トノサマガエルの可能性もあるなとの再検証の余地をもたらしてしまった感がある。)

それは、さておき、このトノサマガエルとトウキョウダルマガエルの詳しいことは、今年投稿したトウキョウダルマガエルの項を読んで頂ければと思うが……今回は、このカエルに出会った時に、ふと感じた率直な疑問を綴ってみたいと思う。

昼間に、このカエルにあっても、こんなに接近して写真を撮らせてもらえることなんか絶対無い……近づこうものなら、結構な遠くからでも異変を察知するとジャンプして逃げてしまうのに、夜は、どうしてこんなに警戒心なく緩慢な動きになるんだろうとの疑問である。トノサマガエル以外にも、ヌマガエルやアマガエルも同じ雰囲気で近くにいた。

天敵のサギ等が夜は活動していなくて油断している。夜は、スタミナが切れている。その場で夜釣りをしていたので、自分達の持って行ったランタン等に物凄い量の虫が飛来していたが、その虫を食べたい方が、身を晒す危険より優った。

まぁ、とにかく、理由は分からないが、なんとなく答えとしては、その場の蛙たちは、臨機応変の状況判断力が弱いというか遅いんじゃないかなと感じた。夜は危険が少ないという前提の方が、目先に迫る危険要素よりも優ってしまうほどに、このの蛙たちにとっての夜の帷は、楽園なのかなと思ってしまった。

ちなみに、このトノサマガエルも、トウキョウダルマガエル同様に、環境省のレッドデータで、準絶滅危惧種に指定されている。

ニホンウナギ Anguilla japonica (Temminck and Schlegel, 1847)

本日は、夕方から娘と一緒に釣りに出かけた。

鰻マンションを発見したのか、ここ2週、小さなウナギを釣り上げていた場所に、三度目の正直で大きなウナギが釣れる事を願っての釣行だった。ただ、今回は、最近の雨のお陰で川の増水は必至で、これが吉と出るのではとの期待はあった。

結果は、本日は、期待通りの釣果だった。65センチの極太を筆頭に、一番小さいのは40センチの計4匹を、短時間で釣り上げることが出来た。

そして、投稿にあたって、ニホンウナギの学名を調べようとネットを巡っていたら、ニホンウナギのレッドデータの記事に出会して愕然とした。

絶滅危惧I類に指定しているのが10都道府県に及び、絶滅危惧II類に指定しているのが、9都道府県、準絶滅危惧種への指定は、6都道府県あり、他に注目している都道府県が8もあるといった具合である。当然の流れで、国の指定するレッドデータで、絶滅危惧IB類に指定されるに至っている。

正直、実感が湧いてこない。卵からの完全養殖が未だ完全でないウナギの世界なので、河口や浜辺でウナギの幼魚を捕獲している漁師達がシラスウナギの量が減っていると言うなら本当なんだと思う。

鰻と言えば、子供の頃に網で採りに行くのが好きだった。住んでいた場所が、海から数キロで500メートル級の山がそびえるような環境だったので、山から流れ落ちて来る水が、いつも川の水を綺麗に洗い、透明度が高い川が何本もあった。そして、山から流されてきた適度な石が川底には沢山あった。

それらの石のうち、3-40センチ四方ぐらいの石を退けると、20センチぐらいのウナギがほぼ確実に居るみたいな感じであった。石を退けても、その下にいる鰻が状況を飲み込むまで結構な間があるのである。同時に、石を退けたことにより、その場の水も濁るのだが、その濁りが完全に晴れたという瞬間にウナギは動き出すので、動き出しを下流側に構えた網に追い込むのである。

ここで、重要なのは、石はそ〜っとゆっくりとひっくり返すことである。ドンっとひくっり返し振動を与えると、ウナギは一瞬で逃げてしまうからである。こうなって来ると、この鰻取りは、ひとりの身体では限界があることに気付く。利き手で網を下流側に固定し、もう一方の片手だけで大きめの石を慎重にゆっくりと持ち上げるのは至難の業である。おまけに、濁りが晴れて鰻が泳ぎ出す方向に合わせて網の位置を一瞬で微調整しなければならないのである。

ゆえに、最低2人からの共同作業が必要になる。石を横側からテコの原理のごとく持ち上げて行き、石が立って安定するところで暫し固定するのである。そして、下流側で網を構える者と目を凝らし、濁りが晴れた瞬間に流れに身を任せて泳ぎ出す鰻の進路を見切って網を微調整するのである。石を退ける際に、横から入るのには理由があって、上流側に立つと、踏ん張る足が泥を巻き上げ続け、濁りが続き鰻の動きが読み取れないのである。

また、ウナギは網に入らず、網の横をすり抜けていくこともあるが、逃げた鰻を目で追うと、付近数メートルの岩下に逃げ込むのが常である。そして、また共同作業の繰り返しである。しかし、今度は、岩の下に2匹の鰻が現れることになるが、2兎を追うものは一兎も得ずの諺を子供達も体感しており、一瞬でターゲットをどちらにするか確認し合うのである。

私は、この鰻取りは、小学校6年の時に引っ越し先で教えてもらい、高校一年までは続けていた。中学生も後半になって来ると、短パンで網とバケツを持ち歩くという風貌が恥ずかしいのか、仲間達が脱落していった。私は、友達の弟らを借りて、続けていたが、高校一年のある日、目的地へ向かう太めの道路で、先生に反抗ばかりしていた中学時代の同級生が、親方に怒られながら、真剣に一心不乱に道路を作っている現場を目撃した。同時に、彼は高校を中退したんだと気が付いた。いつもヘラヘラしていた彼が、真剣に働いてる姿には、心打たれた。理由は分からないが、この日を境に、呑気な鰻取りには興じなくなった。

ところで、学名にjaponica と付いているが、このニホンウナギの生息分布としては、朝鮮半島から中国東部沿岸に棲んでいるものも同一種と思われる。

また、鰻は微妙に違う種が世界中に居て、アメリカのニューイングランド地方でも、シラスウナギで一攫千金しようとウエーダーを履いてタモ網で、鰻の幼魚を掬ってはキロ単位で売っているウナギ・ハンター達が居るのは、テレビで見て知っている。

マナマズ Silurus asotus (Linnaeus, 1758)

先週末、家から車で40分ぐらいの場所で釣ってきた個体である。

大きさは、45センチぐらい。

ナマズと言えば、日本全国、何処にでもいそうな気がするが、沖縄にはいない魚だと分かった。

過去には、福岡県、埼玉県、今回は千葉県で釣った事になるが、これまでに10匹も釣り上げて来ていない気がする。家の近所の小川にも居ると思われるが、数が多くないのか、家の近所で釣ったり、採ったりした事はない。ただ、浅い淀みでクネクネとしなやか過ぎるシルエットを見ると、「あれは、鯉やアメリカナマズではなく、ナマズじゃないかな。」と眺めていたりはする。

さて、今回は、どうしても、釣ったナマズの食味が再確認したかった事もあり、持ち帰って来た。再確認したかった理由は、家の近所の水系に溢れかえっているアメリカナマズが、どうしても美味しく食してあげられず、また、美味しいというまで仕上げる下処理に手間がかかるので、日本の在来のマナマズは、どうなのであろうかと自分自信で再確認したかったのである。

結論から言って、アメリカナマズと在来のマナマズは、別物だと分かった。

今回は、マナマズを食べるに当たって、出来るだけ素材の味が知りたかったので、皮も剥がずに、油で誤魔化すこともせず、蒸した後にタレを付けて焼いて、所謂、九州とかの蒲焼風にしてみた。

感想は、美味しいお魚に尽きる。ちょっと長い時間蒸した事で、生臭みも落ちたのか分からないが、魚それぞれが持つ独特の魚臭さは、ほぼ無い。身質は、ホロホロに柔らかくて、逆に、身割れが激しくて、皮と一緒じゃなかったら、バラバラに解れてしまうかもしれない。

蒸した事で、身の間に入り込んだ水分が滲み出てくるのか、蒲焼というよりは、ちょっとした煮物のような感じになったが、作り方が功を奏したのか、他に類を見ない美味しい魚の煮物が完成した。煮物が美味しい身近な魚として、金目鯛とかナメタガレイとかがあるが、マナマズの方が正直美味しいと思った。丁寧に精米した炊き立ての白米と一緒に食べたら、最高に幸せな気分になると思った。

もちろん、蒲焼という点では、鰻の本来持つ脂の美味さが、ナマズには欠けるが、雑味のない上品な味で柔らかく解れやすい身は、違う方向で美味しい蒲焼だと感じた。きっと、身に色が付くほど煮て煮物にすると、素材本来の旨味をボケさせてしまう可能性もあるので、今回は、偶然だけど、美味しいレシピを発見した感じである。

そんなに美味しいナマズだけど、全く食材として注目していないのが、一般的な日本人の現在の傾向である。身近な環境に美味しい魚を殖やすことの重要性に気が付き始めても良い時代である。食料の輸入事情(未来)が、今後、日本に有利に傾いていくとは、なんとなく思えない時代である。

ところで、このマナマズSilurus asotus (Linnaeus, 1758)は、沖縄含む南西諸島にはいないが、海外では、中国東部や台湾やベトナムの方まで生息しているらしい。日本には、他に固有種として進化したナマズが琵琶湖に2種、中部地方に一種いる。

そして、日本固有種含めて、このナマズのアジアの分布を眺めた時に、マナマズは、元々は、関西以西にしか生息しておらず、江戸時代以降に関東や東北に持ち込まれて来たという推測が、なんとなく真実を物語っている気がしてくる。

たまたま、マナマズの脂の乗った美味しい時期だったのかもしれないが、少し前に投稿したニゴイと共に川魚達も侮れないなと思った。