カネタタキの鳴き声は、私は好きな方である。我が家の庭でも、マサキの生垣の中から、時たま聞こえてくる。ただ、これはカネタタキの鳴き声だけをピックアップして聞いた時に、静寂の中に、等間隔で、チッチッチッチッチッ………チッチッチッチッチッチッ………チッチッチッチッチッチッ………チッチッチッチッチッチッ………と透き通るような高音の連続の鳴き声が耳に染み渡り、なんとも心優しい気持ちになれるのである。
しかし、実際、このカネタタキの声だけをピックアップして聞けるシチュエーションは、現在の私の家の周りには無い気がする。今の時期は、カネタタキの繊細な鳴き声を、完全に掻き消してしまいながら、外来種のアオマツムシの大合唱のシーズンへと突入している。
今の土地に引っ越してくる前に、ずっと街中の住宅密集地に住んでいた事があった。隣家との家の距離2メートル強、その薄暗い境界から、夏から秋にかけて、このカネタタキの繊細な鳴き声を聞く事ができた。大通りから少し入った必然的に高い樹木の少ない奥まった静かな住宅地の中なので、入浴中に風呂場の窓を開けた時に聞こえてくるカネタタキの生演奏は、本当に楽しみのひとつだった。
今となっては、偶然に玄関に迷い込んだカネタタキが、同じようなシチュエーションを、極たまに作ってくれるぐらいだが、カネタタキの風情ある美声を毎回楽しんでいられるほど余裕の無い日も多い……それぐらいの間隔で十分である。
思いの外の美声の持ち主の写真を以下に載せておく。短い翅があるので、オスのようである。メスには、翅は退化してしまっていて、存在しない。