ニワトコ

昨年の秋に家の裏手の荒廃した土地に、どんな植物があるのか、これまた荒れた市道を伝い見ていた時に、この木も目に止まった。

茨城の林の中では、よく見かける木である。名前はニワトコ。

写真では分かりづらいが、緑の葉が付いてる枝だけではなく、画面上で地際から叢生してるつぶつぶした幹肌が全て一本のニワトコの木であると思われる。

秋に紅葉しないのと樹形や枝振りもそれほど美しさを感じず、個人的には、それほど関心を持っていなかった樹木であるが、先ほどネット上で色々調べていたら、比較的多彩な薬効を持っている樹木である事を知ることになった。

漢字では、接骨木と書かれるニワトコだが、この漢字の言われは、古くから枝を黒焼きにして粉末にしたものを、他の薬効成分と混ぜてペースト状にして、骨折している場所に塗り添木すると良いとして利用されてきたところから来ていると思われる。

他にも、新芽や蕾は、山菜として食べる事ができる。記憶が蘇ってきたが、実際、ニワトコの赤紫の蕾をお浸しみたいにして食べた事があったのを思い出した。蕾が小さ過ぎて、空腹を満たすには効率が悪く、味は多少の苦味を感じさせ、美味くも不味くもないと言ったところであろうか。その時点で既に、多食すると下痢や嘔吐をするという記事を読んでいたが、食した後も、体調に異変は感じなかった。ただ、結論として、林に踏み入り、小さな蕾を集める労力をまた掻き立てるほどの魅力を、味の面でも効率の面でも感じなかったのであろうか、それ以降、ニワトコを食べたことはない。きっとニワトコの山菜としての活用を促す切り札が有るとしたら、薬効のアピールなのかなと思う。

という事で、ニワトコの薬効の見地からのいくつかの魅力を書いておくことにする。

枝や葉を集めて布袋に入れて煮出して、その煮汁と一緒に布袋を風呂に浸けておくと、リュウマチや神経痛に効くお湯ができる。

あとは、どれぐらい近縁種なのか分からないが、ヨーロッパにはセイヨウニワトコ(エルダーフラワー)という木があり、日本以上に色々な形で利用されているようであり、ドイツでは、秋に熟す赤い実をリキュールに入れて作るお酒は、エルダーベリーワインとして親しまれている。

あと、粘膜を綺麗にしてくれることから、インフルエンザや風邪の初期症状を緩和してくれるとも言われている。

イギリスでは、魔除の木としても知られていて、映画「ハリーポッター」の中で、魔法の杖なるもの登場するが、それは、このセイヨウニワトコの木から作られている。

ただ、杖と言うと頑強頑丈でしっかりしたイメージを抱きそうだが、もしも日本のニワトコの木で杖を作ったとしたら、水分を含ませて少し屋外に放置したら、直ぐに腐ってしまいそうな柔らかい幹質の木である気はするが……