クツワムシ

昨晩、近所の整備された雑木林に出かけてみた。お目当ては、とあるカミキリムシ。前回、来た時に2匹見つけていたのだが、写真に収める事に失敗していた。

今回は残念ながら、出会うことは出来なかったが、夜の雑木林を散策中、ほぼ終始、かなり大きな音(サウンド)を耳(BGM)にしながらの散策となった。その音は、ジュクジュクジュクジュクジュクというような音が高速で繰り返されてる感じで、とにかく大きな音である。

音の発生源と思われる場所の道路を挟んだ所は、とある工場の敷地なので、虫の鳴き声とは思いながらも、何かしら工場の敷地内から聞こえる機械のモーター音の可能性も頭に入れながら、夜の雑木林を懐中電灯を片手に散策する事を楽しんでいた。

そして、ひと通り散策し終えたところで、その音の発生源の正体を突き止めてみようと、大きな音の鳴る方へと近づいて行った。音の発生場所は、工場の敷地からでは無く、道路を挟んだ反対の林の林縁の低い笹の茂みの中からだった。音の発生場所へと残り1メートルぐらいまで近付いたと思われた時に、その大音響は止まった。あとは、懐中電灯の明かりを頼りに、大音響がしていた辺りを目を凝らして、大音響の主を見つけるのみ。

音の主は、想像より目の前に居た。茶色いかなり大型に見えるキリギリスの仲間。笹の葉が邪魔して、上手く写真が撮れなかったが、なんとか撮った一枚が以下の写真。

直ぐに、これが、クツワムシって奴かという予想は立ったが、家に帰って、耳に焼き付いた鳴き声を照合した結果、やはりクツワムシだと分かった。

そして、このクツワムシを調べていて知った事実に、近年、数を減らしていて、県によっては、絶滅危惧の類に選定されている昆虫という事実があった。元々、太平洋岸では、茨城県や福島県辺りが北限で、日本海側では、新潟県が北限の昆虫という事実を知れた事もさる事ながら、文部省唱歌の「虫の声」にも出て来るこのクツワムシが、もはや、急激にどんどん姿を消しつつある昆虫になっているという事実に、ショックというか少し寂しさを感じた。

ちなみに、私が暮らす茨城県では、クツワムシは、2016年の茨城県のレッドデータの改定で、絶滅危惧種IA類(前回2000年の選定時には、危急種だったので、更に絶滅の危険度がアップした感じ)に選定されている。近隣県の動向を見てみると、茨城県と同じランクなのは、埼玉県、群馬県、新潟県……千葉県や栃木県は、その下のランクのようである。

さてさて、このクツワムシの鳴き声を、個人的に美しいと感じるかと問われたら、トーン的にもメロディー的にも、「そうは思わない」と、現時点の私は答えるのではないだろうか。今から、110年近く前の1910年(明治43年)、尋常小学校読本唱歌に始めて登場した「蟲のこゑ」の時代に、もし、私が生きていたとしても、友達に同意を求めながら同じように答えると思う。ただ、季節を感じさせる風物詩的なサウンドとしては、十分過ぎるぐらいのインパクトを持っている鳴き声だと思う。

話は少し変わるが、この文部省唱歌の選定の歴史を眺めていると、明治維新後の急激な西欧化の風潮の中でも、日本人の繊細な感受性や心は失わないようにしようとの裏テーマの存在に気がつく。

日本の四季を感じさせてくれる虫の声。日本人として、季節を楽しむ心。自然を敏感に感じ取り、調和する心。

クツワムシの衰退の原因のひとつには、そうした日本人の心の変化も、きっとあるんだよね。

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