チョウセンコウスグロアツバ? 成虫 Zanclognatha umbrosalis (Staudinger, 1892)

先週末に、車で40分ぐらいの場所の市町村でウナギ釣りをした時に、見かけて写真に撮っていた蛾である。

大きさは、前翅長10ミリ弱ぐらいだったのを覚えている。

一目見た時に、前翅の後端の形状や全体的な雰囲気から、微妙に小さいシラナミアツバかとも思った。

しかし、毎回、その場所でウナギ釣りをしながら感じていることは、遠い昔の縄文海進の時代には絶対海面下であったであろう場所で現在海水が引いたり、干拓された結果、水田地帯になっているような場所には、私が暮らす台地状とは違って、どんな生態系が広がっているのであろうという事である。

そんな期待が込めて辺りをちょこちょこ観察しながらのウナギ釣りのひと時なので、幼虫が枯葉で育つシラナミアツバの出現は意外であった。枯葉を落としそうな樹木など基本的に皆無の場所だし、もし少し離れた河川敷にヤナギ類があり葉が落葉しても、直ぐにグチャグチャに分解されて枯れ葉というものが積もることは無さそうな湿地エリアである。

ゆえに、このシラナミアツバはどこから来たと思いを巡らせている時に、上の写真の個体の触角に途中に小さな突起(雄のみの特徴)がある事気が付けた。そして、この特徴を持っていてシラナミアツバに似ている蛾を調べていると、Zanclognatha という属にチョウセンコウスグロアツバとコウスグロアツバZanclognatha southi Owada, 1982という2種が浮上して来たのである。

じゃあ、上の写真は、チョウセンコウスグロアツバとコウスグロアツバのどちらなんだと言うと、正直、2種の違いを納得の行く根拠とともに紹介しているサイトは皆無の状態なんじゃないのかと感じた。どちらかと言うと、チョウセンコウスグロアツバとしての投稿が多い気がしたので、私もタイトルをチョウセンコウスグロアツバにクエスチョンマークをつける形で投稿をした次第である。

ちなみに、2種とも、幼虫の食草はイネ科やカヤツリグサ科の植物とのことであるが、これは頷ける。私が、上の写真の個体を見かけた場所は、水田に生えるイネを筆頭にイネ科植物の楽園であった。

最後に、チョウセンコウスグロアツバの生息分布は、国内は、本州以南……九州近海まで。海外は、名前に朝鮮と付くぐらいなので朝鮮半島には生息していると考えたいが、情報は多い蛾とは言えず、生息分布に関して、国内海外問わず、自分なりの納得した裏付けを経て紹介しているわけではないことを告白しておく。

カバフクロテンキヨトウ? 成虫 Mythimna salebrosa (Butler, 1878).

最近、近隣で見かけて、写真に撮っていた蛾の一つである。

大きさは、前翅長12ミリといったところであったであろうか。

種名は、限りなくカバフクロテンキヨトウだと思う。

ただ、カバフクロテンキヨトウのよく出回っている写真の個体達は、カバフ(樺斑)と言うだけあって、樺色が差し色的に入る形で、上の写真のように全体が樺色には見えていない個体が多い。また、翅脈が凸凹した形の筋が目立つ雰囲気になっている個体が殆どである。

こうして来ると、別種の可能性も視野に入れているが、上翅後端中央辺りに見える黒い薄っすらとした斑は、カバフクロテンキヨトウの特徴なのである。

羽化直後は、きっと翅脈上の鱗粉も落ちておらず、筋が目立たないんだ等の仮説を勝手に立てている自分がいるが、同じ場所で、一般的なカバフクロテンキヨトウのイメージに沿った個体に今後出会えれば、上の写真の個体もカバフクロテンキヨトウだと断言出来ると思い、そのチャンスを待っている状態である。

さて、上の写真の個体をカバフクロテンキヨトウとして、話を進めると、幼虫の食草は、イネ科のチジミザサが知られているようである。そして、チジミザサがメインの食草なら、今頃、この蛾に出会うのは頷ける。チジミザサが目立ち始めるのは、自分の主観的印象では、夏以降の気がするからである。

カバフクロテンキヨトウの生息分布の方は、国内は、本州以南……九州近海まで。海外の方は、ちょっと調べても辿り着けなかった。

アオアツバ 成虫 Hypena subcyanea (Butler, 1880)2

数日前の晩に我家の外灯下に来ていた蛾の一つである。

大きさは、前翅長13ミリぐらい。

種名は、アオアツバだと思う。

ここで、過去の投稿を振り返り、アオアツバの投稿がされているかを確認したのだが、昨年の11月にアオアツバのタイトルで投稿があることを一応、確認している。

さて、このアオアツバの名の由来は、全体の雰囲気に青みがかかったところがあるからだと思う。上の写真の個体が、羽化から間もない頃は青みがあったけど、だんだんと消えて来たのか、それとも最初から褐色タイプなのかは、現在の私には分からない。ただ、一つ言えるのは、濃く深く青みがかっている個体がいるのと同様に、濃いのから薄いのまでの幅のある茶色ベースの個体達も存在するのは確かなようである。この色合いの違いが、雌雄の違いと関係があるのかとかも、今の私には分からない。どうも、この色合い的雰囲気に関しては、個体差の大きな種ではあるようである。

そして、上の写真の個体がアオアツバとして話を進めると、出現時期の特徴がある。おそらく、この蛾の特徴として、秋に現れる蛾なのかと思いたい。そして、秋遅くに羽化した蛾は越冬して春先にも姿を見せるみたいなサイクルである。ちなみに、昨年、そっくりなソトムラサキアツバを見かけたのも冬の始まりとも言える11月の後半であった。

そうすると、8月の半ばに目撃出来た上の写真の個体は、秋を少し先取りして現れた個体なのかなぁと思いたい。

さて、このアオアツバと思しき蛾の幼虫の食草は、マメ科の植物とのことである。近隣の自然下には、マメ科の植物は、クズにフジにハギの仲間といった具合に事欠かない。もちろん、マメ科の野菜なんかも食べれるんだと思う。

この蛾の生息分布は、国内は、本州以南……九州を経て、沖縄本島含む南西諸島まで。海外は、ちょっと簡単には調べられなかった。簡単に調べられない理由があるとすると、こういったケースではそっくりな近似種達が存在し、それらの整理統合が完成しておらず、どれか基本種みたいなものに含まれてしまっているケースもよくある気がする。