最近、少し車を飛ばし、海水の入るエリアに釣りに行くことが増えたのだが、下の魚種は、涸沼川という小河川で釣れてきた。飽きない程度に釣れて来る。
上の写真の個体で、体長15センチぐらい。
さて、種名はと言うと、幼魚ではあるがクロダイだと思う。子供の頃から釣りを趣味にする人達は多いが、釣りをする人には、とても馴染みのある魚である。
私は、少年時代を九州で過ごしたことがあるが、その地でも、チヌと言われて、海のウキ釣りの対象魚の王様みたいな位置付けにあった魚である。子供達には、チヌの幼魚の別名であるチンチンという愛称が、大いに受けていたのも思い出す。
私は、少年時代は、親と一緒に釣りに出かけるときは、もっぱら白砂のサーフで投げ釣りをしていたので、このクロダイが釣れて来る事はほぼ皆無であった。その環境で釣れてくるのは、クロダイではなく、真鯛の子であるチャリコである。
おそらく、子供達だけで出かける堤防での気楽なヘチ釣りで、ごくたまに釣れてきたかなという思い出ぐらいである。子供達の竿や素手竿(手釣り)には、クロダイよりも圧倒的にメジナが掛かった。そして、次に多いのはアイナメ。次に多いのは、カサゴやメバルだったであろうか。餌は、堤防にへばり付くフナムシで十分であった。
ゆえに、殆ど、我家の食卓に、クロダイが上ることはなく、しっかりとした味の記憶が残っていないのだが、1ヶ月ぐらい前だったか、近所のスーパーで、30センチぐらいのクロダイが格安で売っていたので、刺身に挽いて恐る恐る食べてみた。感想は、脂がかなり乗った美味しい味であり、へぇ〜って思った。
それでは、この日本全国津々浦々で釣りの対象魚として人気のあるクロダイ(チヌ)の生息分布はと言うと、国内は、北海道の南部から九州の奄美大島辺りまでで、海外は、朝鮮半島辺りを北限に中国沿岸や、南は台湾辺りまで生息しているらしい。そして、沖縄含む南西諸島には、クロダイではなく近縁種達が生息しているとの事である。
どうして、このクロダイの生息分布に拘ったかと言うと、今回釣行した河川では、クロダイばかりが釣れてきたが、それほど遠くない河川(例を上げるなら千葉県の太平洋岸の河川)では、同じような環境では、キチヌ(キビレ)という種が、優先種として釣れて来るのである。
当然、自分としては、このそっくりな2種の違いや、これまで辿ってきた進化の歴史が知りたくなってしまうのである。そして、2種の棲み分けに繋がる原因や環境が何処にあるのか突き止めたくなってしまうのである。
最後に、私のブログでは、基本的に家の近所で見かける事が出来る生物の投稿をしているので、今回のような海の魚を投稿するのは違うと思いそうだが、本当にそうであろうか?
私が住んでいる場所は、茨城県の洪積台地上の端にあり、今より海面が高かった縄文時代には、目と鼻の先の眼下にある現在の新田系のエリアは、海(海水が来ている)であったことが明らかである。その証拠に、近所の台地上には、ところどころ貝塚が見つかり、当然、クロダイの骨も混じっているのである。
増え続ける人口を養うために、そうした元々海であった場所は干拓されて食糧増産の水田へと姿を変えて、同時に、その地に暮らす人達のために、農地への塩害防止や、飲料水確保のために、汽水域が淡水化されていく。
日本で2番目に大きな淡水湖である霞ヶ浦が昔のような汽水湖に戻る時代がいつか来るんであろうなと予測しながら、この投稿を締めくくる。
“クロダイ (チヌ) Acanthopagrus schlegelii (Bleeker, 1854)” への1件の返信