シロギス Sillago japonica (Temminck and Schlegel, 1843)

この魚は、近隣の低い沖積平野のところが海に戻ったり、近くの霞ヶ浦に再び海水が入り汽水化しても、身近に見られる魚にはならないと思うのだが、幼き頃より、とても親しみのある魚なので、投稿してみる事にした。

名前はシロギス。

生息分布の方は、黒潮が流れる日本国内沿岸。この黒潮という暖かい海流を根拠に、海外の生息分布は、韓国、台湾、中国南東部沿岸。もっと南のフィリピン沿岸にも生息しているようである。

上の写真の個体は、先月の終わりに、小学生の娘と房総を旅行した時に、館山港で娘が釣り上げた個体である。

水面から顔を出した時には、「何だ?この魚は?」みたいな感じであったが、陸に上げたものを近くで見ると、シロギスじゃないかと歓喜することになった。歓喜の理由は、久々の対面であったからであろうか。釣魚としては、20数年ぶりの出会いであった。食材としては、築地市場に行く人についでに買ってもらったり、インターネットで取り寄せを試みたりはしていた。しかし、インターネットでは、送料もかかり、過去に九州や山陰で釣りを楽しんでいた時代にあまりに身近な釣魚であったため、「1匹数百円になってしまうのは高いなぁ〜」と感じて、注文を躊躇する事もしばしばあった。

因みに、上の写真の個体は、体長24センチぐらいあり、現場ではとても大きく感じた。針を外そうと、掌で頭を包むと、パシッパシッと腕の内側を尾鰭で叩いて来る。その瞬間、大ギスと言えば、肘叩きというワードが有ったよなと思い出した。

とにかく、27センチ以上の大きなキスになると、頭を掴むと曲げた肘の辺りまで尾は届き、この肘叩きを実感した物だった。針を5本とか6本付けての、キスの数釣りも面白かったが、大ギス狙いも、ドキドキやワクワク感があり、楽しかった思い出がある。家族会議の結果、熊本県の天草や、長崎県の平戸や、遠くはフェリーで韓国の直ぐそばの対馬まで、大きなキスを求めて、家族で出かけた事があった。

ただ、30センチの壁を超えることは、家族の誰も出来なかったような気がする。大きいのは釣れて来るのだが、29,5センチとか29,8センチとか以上に伸びないのである。確か、当時のシロギスの日本記録は、33センチぐらいであったと思う。

ただ、食すという点では、自分達は、24センチ以上のサイズのシロギスは、味が凝縮しないでボケてしまう事を知っていて、15センチから22センチぐらいまでのサイズに、真っ先に箸が向かったものである。当時の料理としては、綺麗に捌いて、フライで食べるスタイルがメインだった。もちろん、刺身や塩焼きなんかでも食べたことはあるが、育ち盛りの身には、淡白で物足りなかったのである。

今回、釣れたシロギスが1匹で、サイズが大きめであったことから、刺身で食べてみる事にした。シロギスの刺身なんかを食べるのは、本当に何十年ぶりだろう?味の方は、コリコリ感が均等にある身で、上品な旨味もしっかり効いていて、とても美味に感じた。

真ん中の列がシロギスで、両側の刺身は、同じく娘が釣ったマゴチである。

最後に、私にとっての釣りの魅力って、ガソリン代や高速代はかかるが、こうやって、魚屋に流通しない魚が釣れて、味を楽しむことが出来ることかなと思う。スーパーの鮮魚売り場に並ぶ魚は、日本近海の食べれる魚の本当に一部の一握りでしかない。おまけに、味が最高に文句なしに美味しいと思えない魚も多い。日本の沿岸には、スーパーの鮮魚売り場に並ばないけど、美味しい魚がごまんといる事を、多くの人に知ってもらいたい。

今回は、釣りデビューで釣りにハマったのか、帰宅を考えていた時間に、「まだ他の場所で釣りたい!」という娘の要望で、最後に立ち寄った堤防で、岩壁の直ぐそばで、このシロギスは釣れて来てくれた。

同時に、私が小学生低学年の時に、父に連れられて、初めてシロギスなる魚を釣ったのも、この館山の海であった事を、ふと思い出した。

将来、娘に家族が出来たら、この館山の海で、シロギス釣りに興じてくれればなとも、思った。

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